《本記事のポイント》
- 80年代のアメリカでは減税によりGDPが27%増えた
- 減税にも関わらず、税収は50%も増えた
- 「財政赤字の拡大」はソ連崩壊させる目的であり、経済政策の失敗ではない
10月22日に投開票日を迎える衆院選において、主な争点の一つが消費税となる。
とはいうものの、その主な選択肢は「10%」か「8%(凍結)」か。安部政権が発足当初から掲げていた「デフレ脱却」に目処はついておらず、「消費支出」「実質賃金」などの指標が停滞しているにも関わらず、「そもそも5%からの増税が間違っていたのではないか」という議論がなされていない。
そんな状況に、「がっかりした」という声は少なくない。
人々の所得を増やしたレーガノミクス
歴史上には、「減税することで、むしろ税収が増えた」という事例がある。それが、アメリカにおける、いわゆる「レーガノミクス」である。
1980年代のアメリカは、ちょうど現在の日本と似たような規模だった(GDPを、2009年の物価指数・為替レートを基準に比較)。
経済状況も、今の日本と同じく、停滞していた。第二次石油危機の影響で、人々は消費を手控え、企業も設備投資を減らしていた。日本などの怒涛の経済成長に追いつかれつつあり、人々は自信を失っていた。
そんな中、登場したのがロナルド・レーガン大統領(在任1981~89年)だ。
同氏は、「米国経済は、戦後最悪の経済的混乱にある」として、いわゆる「レーガノミクス」という政策を発表した。その柱は、「(1)大規模な減税」「(2)規制緩和」「(3)軍事費拡大」「(4)大規模なインフラ投資」など。
特に減税は、例えば所得税は税率を3年間、毎年10%ずつ引き下げるという、大規模なものだった。その他にも、株の売買などにかかる税率、遺産税、法人税など、幅広い減税を行った。
その結果、どうなったのか。
上図を見れば分かるように、レーガン大統領在任中に、アメリカの実質GDPは27%も増えた。背景としては、個人も消費を大幅に増やし、企業も設備投資を積極的に行った。
そしてなんと、大規模な減税にも関わらず、税収は50%増えているのだ。
もちろん、経済成長は減税だけの効果ではない。レーガン政権は、規制緩和のために賃金や原油などの価格規制を緩和し、他にも「規制緩和作業部会」も設置した。インフラ投資や、軍事費増強などとの、相乗効果があっただろう。
いずれにせよレーガノミクスは、人々の生活が豊かになることで、結果的に税収も増えた実例として、参考になる。
日本の「レーガノミクス評」が低い理由
ちなみにレーガノミクスは、日本においては評価が低い。
例えば上に紹介した税収についても、「財政収支は悪化した」と言われることが多い。
確かにレーガン政権下で財政赤字は拡大したが、それは、税収増を上回る勢いで、軍事費を増やしたからだ。
しかしこれは、「ソ連を崩壊に追い込み、冷戦を終わらせた」という"政治的偉業のコスト"である。さらに、冷戦が終結したことで、レーガン政権後のアメリカは軍事費を削減することができ、長期的に財政は改善している。
他にも「レーガノミクス」には様々な評価があるが、「減税による経済成長で、税収が増える」という現象が、紛れも無く起きていたという事実は見逃してはいけない。
また、税収そのものについても、「当初の予想よりも税収は増えなかった」「税収は縮小した」と評価している論文も多い。少し細かい話になるが、その多くが「対GDP比」を見て、「税収が縮小した」と断じている。何のことはない、「税収が増えたが、GDPはもっと勢いよく増えた」というだけの話だ。税収の額面が増えたことは、やはり紛れもない事実だ。
「減税で税収増」は普通のお店で起きていること
「減税で、税収増」というと、「希望的観測」「トンデモ経済学」のように評する声もある。しかし、普通のお店は、景気が悪い時、「値下げ」をすることで、売り上げを増やそうとする。不思議なことでも何でもなく、普通のお店で普通に起きていることだ。
日本においても、消費税を8%に引き上げたことで、景気が大きく冷え込み、税収が下がり始めた。
(参照: http://the-liberty.com/article.php?item_id=13649 )
この教訓から学ぶなら、「消費税を5%に下げる」ことを、政策の選択肢として真剣に議論するべきだ。(馬場光太郎)
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