選挙戦終盤の4月29日、韓国南西部の光州で遊説し、支持を訴える文在寅氏。写真:YONHAP NEWS/アフロ
2017年7月号記事
脅威は「北」だけじゃない
文在寅韓国大統領は金正恩より怖い
5月に行われた韓国の大統領選で、「親北・反日」で有名な文在寅氏が圧勝した。
日本に最も近い国の新大統領、文氏の人物像に迫る。
「朝鮮半島の平和のためなら、私にできる全てのことをする」
就任演説でこう述べた文在寅新大統領。彼の控えめで庶民的な雰囲気と穏やかな笑顔は韓国の人々の心をつかみ、2位を17ポイント引き離して圧勝した。
平和を目指すように見える文氏だが、その思想や政策には"危険な兆し"が見え隠れする。
朴政権反対デモを率いて逮捕
文氏は1953年、韓国南東部に生まれた。両親は北朝鮮出身で、親戚は今も北朝鮮にいる。
生活は貧しかったが成績は良く、名門の中学・高校に進学した。しかし高校の時に飲酒や喫煙などで4回停学に。ついたあだ名は「問題児」だった。 慶熙大学校在学中は、朴正煕政権反対デモを主導。催涙ガスで失神したこともあるほど激しい活動を繰り広げ、逮捕された。
釈放後は兵役で精鋭部隊に配属され、厳しい訓練に耐えた。27歳で司法試験に合格した後は、当時弁護士だった盧武鉉氏と共に弁護士事務所を開設。後に盧氏が大統領になると、秘書室長などを務め、側近として活躍した。
2012年に国会議員になり、大統領選に出馬したが、僅差で朴槿恵前大統領に敗れている。
その雪辱を晴らすかのように、16年に崔順実氏による国政介入スキャンダルが発覚すると、文氏は最前線で朴氏の弾劾と退陣を訴えた。 政権の内部にいる時以外は、激しく体制側を糾弾する革命家的な半生といえる。
「反朴槿恵」で大統領に
実はこの「反体制」「反朴政権」こそ、文氏の"政策"だ。 朴氏の政治スキャンダルに国民が怒り狂う中、朴氏と真逆の政策を言えば言うほど、文氏の支持率は上がった。「日韓合意の再交渉」「高高度迎撃ミサイル(THAAD)配備の再交渉」「北朝鮮に対する融和政策」などだ。 朴氏の政策をすべて否定し、有権者の人気を得ることで、文氏は大統領の座を射止めた。
実現不可能な空約束ばかり
伝統的に保守が強い韓国で、左派の文氏が圧倒的な人気を集めた理由は、「国民の不満」にある。特に、所得格差と高い失業率への不満は爆発寸前だ。
それを受けてか、文氏の公約には、どう見ても実現不可能な空約束が並ぶ。「幼児から高校までの公教育費用を国家が負担」「給食の全面無償化」などだ。
文氏は青年層からも支持されていたが、その理由の一つは「青年雇用義務割当制」を適用すると約束したことだろう。これは、企業に若者を雇用させることを法律で決めるという、資本主義国とは思えない政策だ。
財源については、「富裕層と財閥大企業中心に増税する」としている。しかし一方では、格差是正のために「不公正な財閥経済を打破する」とも表明。財閥を解体したら、誰が莫大な税金を納めるのか。
外交姿勢にも矛盾が多い。
選挙期間中は「大統領になったらアメリカよりもまず北朝鮮に行く」と豪語していたが、選挙直前に北朝鮮がミサイル発射実験を行い、保守系の安哲秀候補が一気に追い上げると、慌てて「早期にアメリカを訪問して北核問題を根源的に解決する案を協議する」と転換。
現実路線でバランスをとっていくだろうという見方もあるが、 場当たり的に人気を得ようとする傾向があることは明らかだ。
筋金入りの反日
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