世界的な食糧価格上昇と新興国でのインフレがクローズアップされてきた。

9日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルなどは、国連食糧農業機関(FAO)が、大規模な干ばつの影響で中国北部で小麦が不作になる危険性があると警告している。世界的な小麦の生産をめぐっては、ロシアが山火事を理由に輸出を制限し、オーストラリアも洪水などの異常気象によって生産への影響が指摘されていた。3日には1月の世界の食糧価格が史上最高値に達したとFAOが発表し、今後G20での対策協議が開かれる予定だが、中国が大規模な小麦の輸入に踏み切れば、食糧価格高騰はさらに押し上げられかねない。

食糧価格とともに注目が集まるのが、新興国で加速するインフレである。中国では8日に金利引き上げを行なったばかりだが、麺類に使用される小麦が不作となれば政府のインフレ対策にも影響を及ぼす。ブラジルでも食糧価格の上昇が政府支出の増加とともにインフレを呼び、1月のインフレ率が5.99%を記録するなど、ルセフ新政権の悩みの種となっている。8日付の英誌エコノミスト(電子版)は、新興市場の成長で商品需要は膨らむが、供給は異常気象や政変などによって不足しかねないリスクを指摘し、「(各国の)中央銀行は、経済的、人的コストを最小限に抑えつつこれらの危機に対応する方法を、考え始めなければならない」と論じている。

エジプト政変も経済問題が原因のひとつとなったが、この問題は庶民生活に直結するだけに、各国政府は時に政治的な立場をかけた対応を迫られる。インフレは脅威だが、過度のインフレ抑制も失業率の上昇を招くというジレンマがある。食糧価格とインフレが、世界経済の波乱要因となりかねない気配である。

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