医療・介護サービスの生産性の水準は、全産業平均の6割という低さにとどまっていることがわかった。財務省の法人企業統計をもとに第一生命経済研究所が試算したもので、7日付け日本経済新聞が伝えている。
民主党や菅政権は、社会保障費拡大政策を「経済成長の要」として期待している。全産業平均の6割という今回の試算は、まだまだ伸びしろがあるとの捉え方もできるが、伸びるためには、現状の生産性低迷の原因を分析し、取り除くことが必須。それなしに、更に公金を注ぐようなことをするべきではない。
記事は、医療・介護の生産性が低い原因として、 ①参入障壁があり事業者間の競争が乏しい。②福祉サービスの料金は公定価格が基本で、サービスの差が生まれにくい、などを挙げている。要するに、国によって保護される代わりに自由がない、典型的な社会主義政策なのだ。
実際、高齢化で両サービスの需要は増えているにもかかわらず、両分野の一人あたり賃金は00年から10年にかけて16.6パーセントも下がってしまった。全産業平均9.5パーセント低下に比べて大きなこの落ち込み幅が、「社会主義的施策」の敗北を雄弁に物語っている。
同記事で鈴木亘・学習院大学教授は、「社会福祉での経済成長は戦略として誤り」とコメントしている。同教授は著書『社会保障の不都合な真実』でも、社会保障分野全般の傾向として、「補助金漬け」「既得権の闇」「高度成長時代の遺物であるシステム」などを指摘。民主党が社会保障費拡大政策を「成長戦略」とか「景気回復策」と喧伝していることを、「典型的な『まじない経済学』( Voodoo Economics)であり、経済政策としてはまるで馬鹿げた考え方といわざるをえない」と厳しく批判している。 国民は菅政権の「まじない」に騙されないよう、データに基づいて冷静に考える必要がある。(T)
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