英国際戦略研究所シニアフェローのマイケル・クロフォードと元CIA副長官のジャミ・ミスシックが、中東・南アジアの少なくとも12カ国で、国の統治権の及ばないメザニン集団が台頭し、政府と国民の間に圧倒的人気や権力を持つようになってきていることを、『フォーリン・アフェアーズ』(2011年 1月号日本語版)にて論じている。

彼らがメザニンと呼ぶのは、ヒズボラ、ムスリム同胞団、マフディ軍、タリバーン、アルカイダ、ラシュカトレイバなどである。

これらの集団が確固たる権力を確立するのは、腐敗した国家権力に救いを求めても無駄だと考える民衆に対して、社会サービスや治安を提供し、政府にはできない形で、民衆を鼓舞し連帯を高めているからであるという。

多少長い論文なので、先日レバノンで元首相のナジブ・ミカティ氏を首相候補にすえたヒズボラ等について触れている部分を紹介するにとどめる(この論文が出された時点では、ヒズボラは首相候補を出していなかった)。

・この論文によると、メザニン集団のなかでもっともうまく体制を整備しているのは、ヒズボラであり、いまやヒズボラはモデルとしてきたムスリム同胞団を上回る高い評価を得ている。

・ヒズボラは、宗教組織、援助機関、政党、民間武装組織という多様な顔を持っている。英国では、ヒズボラの軍事部門の活動だけを禁止し、政治社会サービス領域の活動について制約を課していない。この点、ヒズボラをテロ組織とみなし一切の活動を禁止する米国と異なり、各国で足並みの乱れが出ている。

・ウェストファリア条約体制下での主権原則に基づくと、対外的責任を負うのは、各国政府のみであり、主権上の統治が及んでいない地域に、メザニン集団が入り込み、テロの拠点や政府を不安定化させても、圧力をかけることが難しい。

・状況を放置すれば、国際的な平和に打撃を与える恐れがあるため、両氏は、提言として、国際法の見直しと、ハマスやヒズボラなどの関与すべきメザニン集団とアルカイダやラシュカトレイバのような封じ込めるべきメザニン集団とを区別して、かかわるべきだと述べる。

・そして民衆が、メザニン集団に自分のアイデンティティを重ね合わせなくなるような状況を作り出すことが必須だという。

中東や南アジアだけでなく、旧ソビエト地域とその周辺でメザニン集団の影響力が高まるなか、この問題は無視できないだろう。統治の及ばない地域を意図的に利用してきたイランや支援勢力が恐れるのは、こうした地域が精査の対象にされることでもある。興味深い提言である。(HC)

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