東日本大震災の影響で福島から避難してきた横浜市の中学1年の男子生徒がいじめを受けて不登校になるという事件で、被害者の生徒がいじめに関する手記を弁護士を通じて公開した。生徒は、同じく原発避難でいじめを受けている子供たちの励みになればという思いで、この手記を公開したという。

いじめは小学2年から5年まで続いていた。手記には、「いままでなんかいも死のうとおもった。でもしんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」と書かれていた。

生徒は、「賠償金をもらっている」などと言われ、いじめグループから約10回にわたって計約150万円もの金銭を巻き上げられたり、「ばい菌」と呼ばれたりしていた。また、蹴られる、殴られる、階段で押されたりするなどの暴力も受けていた。生徒は不登校となり、中学生となった今も、民間のフリースクールに通っている。

学校の中に潜む問題

生徒の話によれば、いじめられていることを何回も学校に報告したが、信用してもらえなかったという。

2013年9月にいじめ防止対策推進法が施行されたが、今回のように学校側がいじめの被害者の声を聞かず、責任を回避しようとする例が後を絶たない。こうした学校の隠ぺい体質は大きな問題だ。

学校の隠ぺいが止まらない大きな理由には、同法に、いじめを隠ぺいした教員や学校への罰則が定められていないことがある。隠ぺいしてもしなくても処遇が同じであれば、保身に走る教師から子供を守ることができない。学校には、いじめを認め、調査をし、いじめた生徒に同じ過ちを繰り返さないよう指導を行う義務がある。法律の改正が急がれる。

報道があおった福島県民「いじめ」

さらに、今回の事件は、日本に蔓延する、間違った「原発アレルギー」の問題を浮き彫りにした。

福島県の放射線量は人体に影響がないレベルであるにも関わらず、福島第一原発事故以降、朝日新聞や毎日新聞、東京新聞などを中心としたマスコミは、「福島は放射能で汚染されている」という間違ったイメージを広めてしまった。少年へのいじめは、こうした報道によってもたらされる情報に基づいている。奇しくも、各社紙面ではいじめや不登校の問題が重点的に上げられており、何とも皮肉なことである。

福島県には、風評被害によって放射線量のレベルに問題のない地域から避難を強いられることで、事業が継続できなくなった企業経営者や、病状が悪化して死亡した高齢者も多くいる。市場に流通する作物で、基準値を超える放射線量が検出されるものは皆無であるにも関わらず、福島県産というだけで避ける風潮があるのも現実だ。5年間の間、福島が受けた報道被害は相当な規模だろう。

マスコミ各社は、福島が安全であるという情報についても黙殺することなく報じ、誤解を解く義務があるだろう。(志/晴)

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