このほど政府は、成長戦略の具体的な議論の場となる「未来投資会議」を創設する方針を固めた。

未来投資会議は、政府の成長戦略を担ってきた「産業競争力会議」と、政府の代表らと財界人との意見交換などが行われる「官民対話」に代わるものとしてつくられる予定で、人工知能(AI)の活用やロボット技術を通して「第四次産業革命」の推進などを目指す。

会議では安倍首相が議長を務めるほか、関係閣僚や民間議員がメンバーを構成する。

未来産業への投資を促す方針は評価できる

金融緩和でジャブジャブになったお金に、AIやIoT、ロボット産業といった未来産業への投資を促すことで、「行き先」を示し、経済成長を進める方針は評価できる。

ちなみに、「未来産業投資」は、幸福実現党が2009年の立党当時から訴えてきた政策だ。2009年の政策集にはすでに、「未来の基幹産業に投資する」ことが盛り込まれている。

民間企業がダメージを受ける政策

ただ一方で、政府はこうした政策と逆行する政策も行おうとしている。

その一例が、酒税の税制改革だ。政府は2017年度の税制改正の議論の中でビール類の酒税見直しを進めようとしている。

現在の酒税法では、原料をホップや麦に限った麦芽比率67%以上のものを「ビール」と定義しており、350ミリリットルあたり77円の税金を課している。また、発泡酒などは麦芽量に応じて47円~77円、「第3のビール」には28円の税金が課せられてきた。

これに対し改正議論では、これらの税金を全て55円とすること、「ビール」に含まれなかった発泡酒や第3のビールに対する定義を見直してビールの定義を広げること、などが検討される。

この改正が行われると、ビールを扱っていた企業にとっては減税となり、追い風となるが、麦芽量の比較的少ない「発泡酒」や「第3のビール」を扱っていた企業にとっては「増税」となり、価格の変更や生産計画の見直しを迫られるだろう。

3年後に控える消費増税10%への引き上げも、多くの企業にとって大きな逆風となることが予想される。

経済は政府が動かすものではない

政府の裁量で民間企業の活動が左右されることは、経済発展を妨げる大きな原因となる。

未来産業への投資を行う一方、税制をコロコロ変えて企業活動にブレーキをかける――。なぜこのような矛盾した経済政策が行われるのかといえば、安倍政権には「政府が主導して経済を動かす」という思想があるからだ。

こうした思想が流れていれば、未来投資を行う時にも、政府の余計な注文がつくかもしれない。そうなれば本末転倒となる。

政府がやるべきことは、自由な競争環境を整えることだ。政府が民間の経済活動に口を出すとろくなことにならないことを知らなくてはならない。(祐)

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