早野龍五

プロフィール

(はやの・りゅうご)東京大学大学院理学研究科教授。物理学者。世界最大の素粒子加速器を擁するスイスのCERN(欧州合同原子核研究機関)を拠点に、反陽子ヘリウム原子と反水素原子の研究を行う一方、2011年3月以来、福島第一原子力発電所事故に関して、自身のTwitterから現状分析と情報発信をおこなう。

福島で原発事故が起こって早5年。今も約10万人が避難生活を送っています。しかし、福島は放射線を恐れなければならないレベルにあるのでしょうか。

リバティ4月号の特集「福島で怖いのは放射線ではなく糖尿病」では、福島の放射線量について様々な測定や調査を行ってきた物理学者の早野龍五・東京大学大学院理学研究科教授に話を聴きました。誌幅の関係で掲載できなかった内容について、3回にわたって紹介。今回は2回目です。

固定された福島の「怖いイメージ」

――検査をしても、内部被ばくしているお子さんはいなかったということですが、あまり、ニュースでそのような情報が報じられているのを見ないですね。

早野龍五氏(以下、早野): 福島から発信される情報は、福島県民に向けて発信されているものが圧倒的に多いんです。だから、東京など他の地域の方が福島のニュースを耳にしたり、目にしたりするチャンスはほとんどなくなる。つまり、福島以外の方の原発事故に対するイメージは、2011年3月の「怖いイメージ」で固定されているんです。

福島県内では2011年の秋から、市町村がガラスバッジというものを子供や妊婦に配って、3カ月ごとに回収して外部被ばく線量を図るという検査をやっていました。

たとえば福島市ですと、2011年の秋冬のデータで、ガラスバッチを使って測った子供や妊婦のなかで、年間換算で1ミリシーベルトを超えた人というのは50%くらいでした。その段階で、すでに半分は1ミリシーベルトに収まっていて、10ミリシーベルトの人はいませんでした。