写真は、サウジアラビアのイスラム教の聖地メッカに立つ、カーパ神殿。(Wikipediaより)

国民の8割超がイスラム教スンニ派を占めるサウジアラビアで2日、47人の囚人が処刑された。

その中に、イスラム教シーア派の指導者ニムル・アル=ニムル氏が含まれており、中東で物議を醸している。47人中、43人はアルカイダに所属していたとされるスンニ派の人物であり、ニムル氏を含むシーア派の4人は、銃撃や爆撃で警察官を殺害した罪を問われて処刑された。

深まる宗派間の対立

サウジアラビア政府は、宗派を問わず、「公平」に刑を執行したつもりかもしれないが、同国で排斥されているシーア派側から厳しく糾弾されている。

ニムル氏の処刑を受けて、シーア派の大国である隣国のイランでは、怒った市民がサウジアラビア大使館を襲撃し、建物内部から火の手が上がった。シーア派が率いる隣国のイラクでも、有力な宗教・政治指導者たちがサウジアラビアとの国交断絶を求めた。

また、同じスンニ派の「イスラム国」も、スンニ派の人物が処刑されたことを受け、サウジアラビアの軍や警察に対する報復を呼びかけている。

キリスト教国である欧米側も、宗教指導者であるニムル氏の処刑が、「宗派間の対立を早急に沈静化させるべきときに、それを激化させることになるかもしれない」として、サウジ側に慎重な対応を求めた。

サウジ側は、主にスンニ派による国内テロを抑止するために今回の処刑を行ったと言うが、それが中東のスンニ派とシーア派とイスラム教同士の対立を激化させるだけでなく、国内にさらなるテロを呼び込むことになるかもしれない。

国を転覆しようとするスンニ派の武装集団や、台頭するイランとの対立を懸念するサウジ側としては、頭が痛いところだろう。

複雑化する中東の紛争

中東の紛争は、宗派間、民族間、そして国家間の利害や主張が複雑に入り乱れ、混沌としている。

スンニ派とシーア派の対立だけでなく、欧米側はイスラム圏から波及するテロを懸念する一方、イスラム圏側は、キリスト教国である欧米による介入や、宗派間の分断に対する警戒心もあるだろう。

これらの対立を根本までたどっていくと、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の違いや、イスラム教のスンニ派・シーア派の教義の違いに行き着く。

今こそ、それぞれの教えに共通する普遍的な価値を再確認すべきであり、現代にも通用する新しい思想が必要となっていることに気づくべきだろう。(中)

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