オバマ米大統領は6日(日本時間7日午前)、カルフォルニア州で起きた銃乱射事件を受けて、テレビ演説を行った。その中で、「テロの脅威は新たな段階に入った」と指摘し、テロ対策に全力を上げるとともに、過激派組織「イスラム国」(IS)の壊滅を目指す決意を改めて強調した。

演説では、イラクやシリアでの現地部隊育成の促進や反体制派の支援、テロリストに関する情報収集を行い、有志連合による軍事圧力を強めていくと説明した。さらに外国人がアメリカに入国する際の事前審査の強化やテロリストによる技術の悪用を防ぐ取り組みをハイテク企業に要請した。

本当は戦いたくない、オバマ大統領

最も注目すべきは、オバマ大統領が、「イラクやシリアで長くコストがかかる地上戦に引きずり込まれるべきではない」と述べ、大規模な地上部隊を派遣する考えはないと改めて強調したことである。今回の演説の目的は、国内に広がるテロの不安を受けて行われたものであり、本気でテロと戦う意志を示したわけではない。

野党の共和党からは、今回の演説内容は従来の政策と何ら変わらないと批判している。

議会上院外交委員会のコーカー委員長は「イスラム国(IS)封じ込め策の繰り返しに過ぎない」と声明を発表した。

オバマ大統領の本音は、「本当は、戦いたくない」というものだろう。オバマ大統領は、2013年シリア内戦に関する演説で「アメリカは世界の警察官ではない」と発言。当時、シリア政府軍が化学兵器で民間人を虐殺し、シリア全体で10万人近くの犠牲者が出ていた。そんな中、財政再建で軍事費の削減や国内問題の解決を優先させるべくアメリカは軍事介入を見送った。その後、内戦が激化し、泥沼化した。その混乱がイスラム国拡大の温床となったのである。

今回、改めてアメリカは「世界の警察」を放棄した。結局、オバマ大統領は「世界の安定」よりも「政権の安定」のために演説を行ったのだ。世界の秩序は、今後もイスラム国を中心に混沌とした状況が続いていくことが予想される。

第三者的立場の日本は、イスラム国の問題解決の鍵を握る

そんな状況の中、日本はテロにどのように向き合っているのだろうか?

今年9月の第70回国連総会における一般討論演説にて安倍首相は、中東やシリアへの資金援助については述べたものの「イスラム国」「テロ」という言葉は1回も出てこなかった。日本がテロについてどのように考えているか、どのような判断をしているのかは見えてこない。

イスラム国の問題は、キリスト教とイスラム教の宗教対立が絡む複雑な問題である。日本は両者に対して宗教的な対立要素はなく、中東とも経済的に原油供給源としての密接な関係を保っている。本来は、第三者的な立ち位置でイスラム国の問題解決の鍵となる考え方を打ち出すことのできる国である。

日本は経済的にも世界に大きな影響力を持つ国であり、世界の平和を構築し、繁栄へと牽引するための役割を担うべき立場にある。世界における日本の立ち位置を自覚し、中東の安定のために勇気を持ってリーダーシップを発揮できる国を目指すべきだろう。(HS政経塾 油井哲史)

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幸福の科学出版 『国際政治を見る眼』 大川隆法著

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