ミャンマーで民政移管後、初めての総選挙が行われ、アウン・サン・スー・チー党首の率いる最大野党・国民民主連盟(NLD)の勝利が確実視されている。
ミャンマーの議会は、あらかじめ議席の4分の1が軍人に割り当てられているため、政権交代を実現するには、総選挙で争う議席のうち3分の2(約67%)以上の獲得が必要だ。NLDの独自調査によると、全国で70%以上の議席を確保する勢いという。
有権者がかみしめる「自由の創設」の大切さ
ミャンマーでは1962年のクーデター以来、半世紀以上に渡って軍事政権が続いてきた。1990年の総選挙では、NLDが全議席の8割近くを得たにもかかわらず、軍政側は民主化勢力を弾圧。2011年にようやく民政に移管し、元軍政幹部のテイン・セイン大統領が少しずつ民主化を進めてきた。
今回の総選挙で、大多数の国民は「民主化」を求めていることが明らかになった。投票日当日には、早朝から投票所に長い行列ができ、国民は自らが政治家を選ぶ喜びをかみ締めていた。
第二次大戦当時、ナチス政権から逃れるために亡命したユダヤ系ドイツ人の哲学者ハンナ・アーレントは、政治の理想を「自由の創設」に置いた。国民が自らの意思で政治に参加し、「理想の共同体」をつくることが、民主制の理想的な政治形態とした。今回の総選挙で、ミャンマーの有権者も、自分たちの手で「自由の創設」ができる幸福を感じていることだろう。
「立憲主義」でいくと、スー・チー氏は大統領になれない
だが、もろ手を挙げて喜ぶことはできない。勝利が確実視されているNLDのスー・チー党首が大統領になれないという問題が残っている。
軍事政権は2008年、憲法に、配偶者や子供などに外国人がいる人物は正・副大統領になれないという規定を新しく盛り込んだ。もちろん、イギリス人の夫(故人)とイギリス国籍を持つ2人の息子がいるスー・チーさんを狙い撃ちしたものだ。今年6月、この規定を撤廃する憲法改正案が提出されたが、否決された。
大川隆法・幸福の科学総裁は7月、さいたま市で行った法話「人類史の大転換」の中で、ミャンマーの憲法について触れ、「立憲主義」を盾に安保法制反対を叫ぶ危うさについて、こう指摘した。
「 日本では、今、『立憲主義』ということが盛んに言われていますが、この立憲主義でいく場合には、今のスー・チー氏は大統領にはなれないのです。憲法においては、そういうこともできます。(中略)必ずしも、『法律万能』とは言えません。『立憲主義』『法治主義』といっても、結局は、つくっている人たちの平均の頭脳が考えた力にしかすぎないのです 」
おかしな憲法や法律によって、国民の生活や自由が脅かされているのならば、国民主権の立場で、憲法や法律を変えるべきだ。それこそが、「自由の創設」であると言える。
「立憲主義」の危うさ、「自由の創設」の大切さなど、ミャンマーの総選挙から日本人が学ぶべきものは多い。(泉)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『政治の理想について』 大川隆法著
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