ミャンマーの最大野党・国民民主連盟(NLD)党首のアウン・サン・スー・チー氏は10日から14日にかけて中国を公式訪問し、習近平・国家主席らと会談する予定だ。

ミャンマーの民主化を進めるスー・チー氏は、中国訪問に消極的だった。だが、経済的つながりが最も強い中国と対立すれば、中国と利害関係のある経済界からの支持が得られないと判断。今秋に行われる予定のミャンマー総選挙を見込んで、訪中に踏み切った。

スー・チー氏の訪中を要請した中国側には、中国と距離を取り、米国に接近し始めたミャンマーのテイン・セイン政権をけん制する目的があるようだ。

また、ミャンマー与党・連邦団結発展党(USDP)が10日に国会提出した憲法改正案には、現憲法と同じ「外国籍の配偶者や子供がいる人物は、大統領になることができない」という規定が盛り込まれたままだった。これにより、英国籍の息子を持つスー・チー氏が新大統領に就任することはほぼ不可能となった。

スー・チー氏は20年近く自宅軟禁されながらも、ミャンマーの民主化に取り組んできた。圧倒的な支持を集めるスー・チー氏が大統領になれないなど、問題は山積みだが、20年の歳月を経て、軍事政権から少しずつ民主化へと進みつつある。

だが、今回の訪中が民主化を後退させるのではないかが危惧される。2011年の民政移管後、ミャンマーは中国への経済依存を脱し、欧米諸国との関係構築を行おうと試みてきた。経済を理由としてスー・チー氏が訪中し、民主主義を理解しない中国寄りに戻るのは残念なことだ。

ミャンマーの中国寄りの流れを止めるには、日本の存在がカギとなる。ビジネスチャンスを求めて多くの外国企業がミャンマーに進出する中、ミャンマーの情報が少なかった日本企業は後れを取ってきた。日本企業がミャンマーとのビジネスで成功していないのは、日本にないビジネスの慣習、基礎インフラや法律の整備が大幅に遅れていることなどが原因だ。

だがそれでも日本は、ミャンマーとの経済的な結びつきを強めるべきだ。ミャンマー人の多くは、戦後に先進国として大きく発展した日本をアジアのリーダーとして尊敬しているという。また、ヤンゴン市内を走る自動車の大半はトヨタの中古車であり、日本の製品にも信頼を寄せている。

ミャンマーの民主化運動の支援は、経済的な面からも可能だ。日本企業はもっと積極的にミャンマーに進出し、ミャンマーが経済的に中国に依存する必要をなくすべきだ。(泉)

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