厚生労働省は20日、福島第1原発事故の廃炉作業をしていた40 代の男性が、血液のがんである白血病にかかったことについて、「労災」を認めたと発表した。福島の原発作業員のがんで労災が認められたのは、今回が初めてだ。

病気になった男性に対しては、一日も早く元気になられるよう心からお祈り申し上げたい。

この男性は、原発での1年半あまりの業務中に累積で19.8ミリシーベルトの放射線を浴びており、白血病の労災認定の基準である年間5ミリシーベルトを上回った。そのため厚生労働省は、「被ばくと白血病の因果関係は明らかではないが、労働者補償の観点から認定した」としている。

「被ばくが白血病の原因」とは証明できない

だが、年間20ミリシーベルト程度の放射線を浴びただけでがんになるというイメージが広がるのは問題がある。

がんの要因は、食生活や運動不足など、放射線被ばく以外によるものが多いとされる。被ばくと白血病に因果関係がないことが証明できない限り、今後も労災を申請する人は増えていくだろう。

福島第一原発で事故からこれまでに働いていた作業員は延べ4万5000人、年間5ミリシーベルト以上の被ばくをした人は2万1000人余りに上る。日本では、3人に1人が「がん」で亡くなっているため、単純に考えると、放射線被ばくとは無関係に原発作業員の3分の1は労災認定を受ける可能性があるということになる。

「放射線でがんになる」という考え方に注意

放射線被ばくによる白血病の労災認定基準は1976年に定められ、「被ばく量が年5ミリシーベルト以上」かつ「被ばく開始から1年を超えてから発症し、ウイルス感染など他の要因がない」とされている。

しかし、国連の科学委員会や国際原子力機関(IAEA)などの信頼性の高い国際機関は、2013年に「年間100ミリシーベルト以下の被ばくでは人体に無害」としている。同委員会は2014年4月にも、「福島原発事故で漏れた放射線でガンが増えることは今後もない」と報告している。ちなみに、CTスキャン1回分の被ばく量は6ミリシーベルトになる。これらのことを考慮に入れれば、白血病の労災認定が「被ばく量が年5ミリシーベルト以上」とされていることは疑問だ。

今回の「労災認定」のニュースで、「放射線でがんになるリスクが高まる」という誤った考え方が広がらないよう注意したい。(真)

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2014年4月5日付本欄 国連が「福島原発事故でがんは増えない」と報告 際立つ避難指示の犠牲

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