加藤達也・産経新聞前ソウル支局長は、2014年の韓国・セウォル号沈没事故時に、7時間姿を消した朴槿恵(パク・クネ)大統領の行方の疑惑を産経新聞のウェブサイトに掲載した。韓国検察は、加藤氏が「朴大統領の名誉を毀損した」として起訴し、出国禁止処分としていた。この問題について、韓国検察は19日、加藤氏に対し懲役1年6月を求刑した。
日本内外から懸念の声
この求刑に対し、菅義偉官房長官は、「極めて残念だ。今後も種々の機会、さまざまなレベルで、引き続き適切な対応を韓国側に求めたい」と述べた。産経新聞の小林毅取締役は、「驚きと怒りを禁じ得ない」とし「言論・報道・表現の自由は、民主主義の根幹である。韓国は、この根本に立ち返り、国際常識に即した判断を行うよう、強く求める」と伝えた。また、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部:パリ)は、加藤前支局長に不当な懲役刑を科さないよう求める声明を発表した。
明らかになった韓国の"特異性"
朴大統領が事故当日、姿を消した7時間について、多くの韓国国民が注目していた。加藤前支局長は、自身の記事はそれを伝えたものであり、悪意があったとは言えないと、「記事の公益性」を訴えてきた。しかし検察はその論点にはほとんど触れずに、「加藤氏は、記事で取り上げたうわさの内容を虚偽であることを知りながら報道した」と断じ、産経新聞が韓国大統領府から出入り禁止を通告されていたことから、「抗議のために誹謗記事を書いた」とまで主張した。
日本内外のメディアから、今回の判決は大統領府のメンツを立てるものだと見られており、公平性に欠けると批判されている。
韓国側にまともな裁判を行うよう主張すべき
今回の求刑は、近代国家の「裁判」ではなく、「復讐」に近いものだ。過去、近代的な司法制度がない国において外国人が罪を犯した場合は、治外法権の一つである「領事裁判権」が認められていた。「領事裁判権」とは、外国人が現在住んでいる国の裁判権に服さず、本国の法にもとづいて本国領事の裁判を受ける権利のことだ。
もし海外で自国民が、国際社会に通用する法的な根拠がない裁判で有罪にされてしまうのであれば、国は国民を守ることができないだろう。現代では「領事裁判権」を主張することはできなくとも、日本政府は韓国側に、正当な裁判をするようもっと強く求めても良いのではないか。
安倍晋三首相はこうした事態を「遺憾」の一言で済ますのではなく、言論の自由の観点から加藤氏の無罪判決を求めるとともに、今後も「まともな裁判」を行うよう強く求めるべきだ。(真)
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