関東・東北豪雨で、茨城県常総市付近の鬼怒川の堤防が決壊した際、太陽光発電に使うソーラーパネルのことが話題になった。決壊場所は、周囲に比べ2メートルほどの高さが設置業者によって削られていたため、当初、「ソーラーパネルのせいで決壊したのでは」とささやかれていた。

実際に決壊したのは、その下流からだったようだが、同地点でも川の水が溢れていた様子が、上空から撮影された映像で確認されている。昨年のパネル設置工事の最中、周囲の住民から通報を受けた市の担当者が業者に指摘し、土のうで補強していたというが、果たして高さや強度は十分だったのだろうか。

エコなエネルギーとして期待された太陽光発電。そのソーラーパネルが全国に普及するにつれて、リスクが目立ってきた。

まずは、感電の危険性だ。今回の豪雨では、一般社団法人・太陽光発電協会が、水没したソーラーパネルに近づかないよう警告を出した。ケーブルを切っても、浸水していても、太陽光が当たればパネルは発電するため、感電する危険性があるという。

パネルの設置で、土砂崩れの危険性を高めてしまっている例もある。和歌山県では、2011年に土砂崩れが多発したために「地すべり防止区域」として指定されていた山で、斜面を削ったにもかかわらず、その後補強工事もせずにパネルを設置している場所があると報じられた。近くには人が住んでいるという。

事業主の名前が分からない場所もあるという。耐用年数が過ぎて撤去する際、誰が責任を取るのか。パネルの中身には重金属も含まれる。割れて地下水に染み込んだ場合、環境汚染にもつながる。

また、突風で壊れ、周囲の建物を破壊している。8月には福岡県で、突風にあおられた屋上のソーラーパネルが約150枚飛ばされ、パネルが当たった民家が半壊するなどの被害が出た。6月にも群馬県でパネルが約600枚飛ばされている。風に弱いようだ。

アメリカでは死亡事故も起きている。屋上に設置されていたパネルそのものから出火した際、高温でも発電し続けるため、感電した消防団員が何人も亡くなったという。

東日本大震災後、原発は危険だということで、政府は再生エネルギーの使用割合を高める目標を立てるなど積極的に推進した。ただ、原発のリスクに過剰反応して再生エネルギーに飛びついた結果、「安全な運用」への注意が薄れ、人命を危機にさらす事故もひき起こしている。

例えば、山の斜面を削ってパネルを設置したならば補強工事が必要だが、採算が合わないために行われていないケースがある。また、パネルを設置するために木が切り倒され、保水力を失った山が原因で洪水が増えれば、何のための再生エネルギーなのか分からない。

「反原発」を掲げる人には、こうした代替エネルギーのリスクにも目を向け、いま本当に必要な、経済活動を支えるエネルギー体制を真剣に考えてほしい。(居)

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