東京・霞が関の経済産業省前には、東日本大震災が起きた年の秋以来、「脱原発テント」が設置され、今年秋で3年を迎えた。このテントは脱原発運動のシンボルにもなっているが、経産省はこれまでに退去を迫り、立ち退き期限の最終日には警察も出動したが、その際に"市民"数千人で阻止。現在は、立ち退きを求める民事訴訟を起こされている。

臨時国会が始まった29日には、国会議事堂周辺で、安倍政権が進めようとしている原発再稼働や安全保障政策に抗議するデモが行われ、主催者発表で2000人の参加者が議事堂を囲むように手をつなぐ「人間の鎖」をつくり、抗議した。

また、脱原発を呼びかける小泉純一郎元首相は29日、細川護煕元首相とともに、音楽家の坂本龍一氏が呼びかけた脱原発ライブに参加。「原発のない社会こそ豊かな生活だというふうにしないといけない」などと、「原発ゼロ社会」を目指すよう訴えた。

さらに小泉氏は、ライブ後の会見で、「御嶽山の噴火は専門家でも想定外と言っている。想定外とはいつでも起こりうることだ」と指摘。そして、「地震、津波、噴火も各地で起こる。日本は原発をやっちゃいけない国だ」と主張した。

また、菅直人元首相も28日、鹿児島市で行われたストップ・川内原発再稼働全国集会に参加。自身のブログで「私は御嶽山の噴火が全く予知できなかったことに触れ、桜島など火山地帯に囲まれた川内原発の危険性をまず話した」とつづっている。

日本のリーダーを務めた3人が、口をそろえて「脱原発」を唱える状況を見ると、あまりの大局観のなさに愕然とする。原発で「想定外」が起きると騒ぐが、それは原発だけで起きるわけではない。火力や風力、太陽光発電など、あらゆる発電にも想定外はあり得る。実際に、東日本大震災の際は、千葉にある製油所で火災爆発事故が起きている。

また、原子力を除く日本のエネルギー自給率は4%だが、震災後の日本は、発電を火力に頼っている。ただ、その火力発電の施設も、老朽化に加えて、フル稼働が続いている影響により、全国でトラブルが相次いでいる。

さらに、日本は火力発電に必要な化石燃料を中東から輸入しているが、中東の有事で原油価格も上昇傾向にあり、今後、石油タンカーが通るシーレーンを中国に封鎖されるような事態が起きた場合、日本は深刻なエネルギー不足に陥る。

他にも、「原発は広い範囲に被害が広がる」という反論があるかもしれない。だが、福島の原発事故の放射線の影響で死んだ人はゼロであり、科学的に見て被曝線量は低く、避難している多くの人々は住んでいた場所に帰ることができるのが実情だ。

日本が進むべき道を誤ることのないように、感情的な脱原発運動には終止符が打たれることを望む。(飯)

【関連記事】

2014年6月号記事 脱原発派は「巻き返し」をあきらめよ 「文明否定」が多くの犠牲を生んできた ? The Liberty Opinion

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7723

2014年9月25日付本欄 核廃棄物を少なくする原子炉の開発が進む 技術革新で、原発悪玉論の根拠を崩せ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8493