中東やアフリカなどからヨーロッパを目指す難民や移民が急増している。特に欧州連合(EU)の東端に位置するハンガリーには今年、ドイツを目指す難民がすでに15万人以上殺到し、大混乱となっている。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年、地中海を渡りヨーロッパに上陸した難民や移民の数は、昨年総数の22万人を超え、30万人以上に上るという。

難民が増加した背景には、イスラム国の台頭や内戦などで、シリアやイラクなどの治安が悪化したことがある。その他にも、バングラデシュやアフガニスタンで起きている飢えや貧困なども原因とみられる。

欧州各国が難民対応に追われている

そして、危険を冒して国を脱出した難民が死亡するケースも頻発している。先月27日にはハンガリー国境近くの高速道路に放置された冷凍トラックから、乗り込んでいたシリア難民71人が窒息死した状態で発見された。また同日、シリアなどからの難民を約500人乗せたボートが地中海で転覆し、100人以上が死亡。今年に入り、地中海で死亡・行方不明となった難民は約2500人に上るという。

急増する難民問題に対し、EUはイタリアやギリシャ、ハンガリーに到着した難民のうち、最大16万人の受け入れをEU加盟国で分担する計画であると、9月4日付ウォール・ストリート・ジャーナル電子版が報じた。計画の詳細は9日に発表される見込みだ。

シリア内戦が長引いた原因は、アメリカの軍事不介入

この欧州の難民問題の根本原因をたどると、シリア内戦に関わるアメリカの対応の失敗がある。シリア政府が化学兵器を使用したという証拠が出たにもかかわらず、アメリカが軍事介入に踏み切らなかったために、内戦は泥沼化してしまった。

最近ではアサド政権とシリア全土の半数を制圧したイスラム国が協力し、反シリア政府勢力を潰しにかかっているとの報道もある。2015年4月までのシリア国民の死者は22万人を超えている。

日本にも起こりうる難民問題

難民問題は、日本にとっても人ごとではない。朝鮮半島で戦争が起こった場合や、フィリピンや台湾などの日本の友好国が中国の侵略の危機に瀕した場合、大量の難民が日本に押し寄せることも十分ありうる。また中国が日本に侵攻してくれば、日本人自身が難民になる可能性すらあるのだ。

結局、難民問題の根本的な対策は、各国の外交・安全保障体制を確立することにある。軍拡を続ける中国や北朝鮮をけん制するためにも、日本は安全保障を確立し、周辺国との協力を進める必要がある。それがひいては、難民の発生という新たな不幸を防ぐことにつながっていく。(泉)

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幸福の科学出版 『「集団的自衛権」はなぜ必要なのか』 大川隆法著

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2014年4月号記事 アメリカが見殺しにするシリア国民 - The Liberty Opinion 2

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2015年7月30日付本欄 もう一つの欧州危機は、年60万人の難民

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