「ヨーロッパを揺るがしている危機」といえば「ギリシャ財政危機」や「ウクライナ紛争」などを連想するかもしれない。それらに劣らずヨーロッパ各国が苦しんでいるのが、「押し寄せる難民」という危機だ。中東やアフリカの混乱を逃れて、多くの難民が亡命を求めてヨーロッパに来ている。
欧州委員会で統計を担当するユーロスタットによると、去年だけで62万6千人(うち約20%がシリア人)もの難民がヨーロッパに亡命申請し、約半数が受け入れられたという。
また、米ハフィントンポスト紙によると、2015年に入ってから15万人もの難民がヨーロッパに辿り着いたという。そのほとんどが、中東に隣接するギリシャや、リビアから地中海を越えてイタリアに到着している。
難民受け入れと経済的現実の間に揺れるヨーロッパ
ギリシャやイタリアはすでに受け入れの限界に達しているため、欧州連合(EU)は他の国々に難民を振り分けている。
しかし、ヨーロッパ各国の中では、難民に眉をしかめる者も多い。大勢の難民が国の財政を圧迫すること、難民の中に過激派集団が潜んでいる可能性、そして大量の異国民を受け入れることで、国の文化や性質が変わってしまうことを恐れる国民など、懸念は絶えない。
ドイツのデア・シュピーゲル紙によると、難民の約3分の1が振り分けられているドイツでは、難民に対する反感から、反移民主義の右翼団体の台頭が目立ち始めているという。これらの団体は、難民の住居や施設に対して放火するなど、犯罪行為にも及んでいる。イタリアでも、難民を乗せたバスを守る警官隊と反移民デモ隊が衝突し、負傷者が出ている。
ヨーロッパ各国の政府としては、紛争から逃れてくる難民を追い返すわけにもいかず、受け入れにも限度があるため、非常に厳しい選択を迫られているのだ。
日本だったらどうする?
ヨーロッパが直面している難民問題は、日本にとっても他人事ではない。将来、朝鮮半島の有事や、中国で異変があった場合、難民が船に乗って日本に押し寄せてくる可能性はある。また、それらの難民を第三国が引き受けてくれるとも限らない。
そのとき、日本はどのように対応するべきだろうか。
ヨーロッパがいま経験している難民問題は、日本が同じような状況に置かれたときに直面するであろう軋轢や問題を、事前に明らかにしてくれていると言える。
最終的には、中東やアフリカの紛争が終わらない限り、難民の波が絶えることはないだろう。日本は、ヨーロッパの難民問題を遠い国の出来事と捉えずに、先進各国とともに手を差し伸べ、国際社会における責任を果たすべきではないだろうか。また、問題の根幹である中東の紛争解決のために、宗教間・民族間の融和を後押しすべきである。(中)
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