浮世絵師・歌川芳虎の「子供遊 凧あげくらべ」。幕末の物価高騰を風刺した絵。

2020年10月号記事

あなたの貯金が狙われている!

貯金税という悪夢

これまでも、そして現在も、自民党政府は大盤振る舞いを続けている。

この先、国民にどのようなツケが回ってくるのか─。

(編集部 河本晴恵、山本慧)


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革命は増税から始まった

重税は人々の暮らしを圧迫し、自由を封じてしまう。

明治維新が起きる以前、江戸幕府は慢性的な財政難に陥っており、人々の不信や不満が募っていた。

幕府の収入は年貢中心で、米の生産次第だった。全国の金や銀の産出も元禄以降(18世紀~)は減少し、収入は増えなかった。

一方で、幕府の支出はどんどん増えた。将軍家や武士の暮らし向きは派手になり続けた上に、相次ぐ火事や、水害、地震、凶作などの天変地異への対応で支出はかさんでいった。

借金の限界が来た

幕末には、黒船来航や、討幕派による江戸城への放火などで、さらに支出が増えていった。

幕府は「金貨を小さくする」「金の割合を減らす」など、貨幣を薄める改鋳を繰り返した。 古い貨幣と交換する時に差額を利益として得て、赤字を補填した。

また、 幕府は町人に「御用金令」を出し、乱発した債券(幕府の借入れ)を押し付けようとした。 しかし償還方法も不明瞭で「返ってくるのか」と引き受け手が見つからず、町人もあの手この手で抵抗した。幕府は後に踏み倒しているので、事実上の増税と言える。

他にも、 「荒れ地からも年貢を取る」という増税策や改鋳によるインフレで庶民の生活は脅かされ、各地で一揆が相次いだ。 それを鎮めるためにも、政府の資産は使い果たされた。

長州征伐の戦費調達のため、幕府は外国からの借金を検討。しかし返せない場合は植民地支配されかねない、と断念した。「もうこれ以上借金ができない」という事態に追い込まれ、ついに幕府は倒れたのだ。

勝手な課税は許さない

アメリカの独立革命も、母国イギリスの財政問題と税金問題が発端となった。

イギリスが、フランスとの間で植民地における勢力争いを繰り広げていた時代。 戦費調達のために国債を募集していたが、返済を税金で賄えず、さらに国債を発行するという自転車操業になった。

そこで1765年、 植民地アメリカに「印紙税」をかける法案が通過。 法律関係の書類だけでなく、新聞やパンフレットにまで課税されることになり、アメリカでは大反対運動が起きた。

印紙税は翌66年に廃止されるが、 67年には、「茶その他に対する間接税」が課せられる。 輸入品への課税に反発したアメリカの人々は不買運動を行い、「代表なくして課税なし」がスローガンの反対運動が起こった。

1773年に起きた、ボストン茶会事件。

73年にはインディアンに変装したグループが、茶の独占販売権を持つ東インド会社の茶箱をボストン港に投げ込む、いわゆる「ボストン茶会事件」が起きる。ここから独立革命が始まり、76年にアメリカは独立を宣言する。

「財政難」の中で増税するのは政府の常だが、自由が奪われれば、人々は自らの手に自由を取り戻そうと、新たな政府を創ろうとする。それが「革命」のエネルギーとなった。

戦後、第二次大戦からの復興のために築かれた日本の政府機構は、高度経済成長を経た今、人々の自由を奪っている。そろそろ耐用年数が来ているのではないか。

写真:アフロ

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自民党幕府、終わりの始まり

政府は創り変えられる