コロナに便乗して国家緊急事態条項導入の議論が活発化 その是非をどう考えるべき?

コロナに便乗して国家緊急事態条項導入の議論が活発化 その是非をどう考えるべき?

 

《本記事のポイント》

  • アメリカ司法の場で、強制的な自宅待機や営業停止の是非が争われている
  • 恣意的な行政命令に対して、訴訟よりも服従を選ぶ日本社会
  • 国家緊急事態条項の導入は大統領制、小さな政府、独立自尊の国民性とセットで

 

 

日本では、街や店舗において「外出はできるだけ控えましょう」というアナウンスが日常的に流れている。一方、全米各地では、長引く強制的な自宅待機や営業停止などの命令に対して訴訟が相次いでいる。

 

 

起業家マスク氏が外出規制は憲法違反だと訴える

その代表的なケースが、米電気自動車メーカー・テスラのイーロン・マスクCEOが起こした郡に対する訴訟だ。アメリカの各州は3月、「必要不可欠でないビジネス」に対し、閉鎖や操業停止を命じ始めた。カリフォルニア州アラメダ郡は、都市封鎖を強化する中で、テスラの工場に閉鎖命令を下していた。

 

マスク氏はこうした州の動きについて5月9日、「率直に言って、我慢の限界だ。テスラは直ちに本社および将来の事業計画をテキサス州とネバダ州に移転する」とツイートし、同日アラメダ郡を提訴した。

 

アラメダ郡当局はテスラの工場に閉鎖を命じる一方で、大麻販売店には営業を認めている。マスク氏側は訴訟で「対応は恣意的で合理的根拠を欠く」と主張。郡の外出禁止令は行き過ぎで、憲法で保障された法の下の平等にも反するとして、命令の停止などを求めた。

 

また、電気モーターやバッテリーシステムという「必要不可欠なインフラ」を製造しているため「必要不可欠なビジネス」だと訴えた。

 

マスク氏は、11日に当局に逮捕されることを覚悟でアラメダ郡のテスラの工場を再開。ここでは1万人の労働者が働いている。マスク氏は従業員の身の上を案じ、「誰かを逮捕するなら、私だけにするようお願いする」と述べていた。

 

これを後押ししたのは、トランプ大統領だ。12日、ツイッターに「カリフォルニア州はテスラとイーロン・マスク氏に今すぐに工場を開けさせるべきだ」と投稿。再開は「迅速かつ安全に行える!」と訴えた。

 

結局、アラメダ郡の公衆衛生当局がテスラの感染拡大防止策を精査し、テスラに追加の安全対策を要請した上で、工場を5月18日から再開することで両者は合意。3月23日から約2カ月ぶりの操業になる。

 

 

ウィスコンシン州最高裁で外出規制延長は違法

また、ウィスコンシン州の最高裁は13日、4月に州政府が決めた外出禁止措置の延長は州法に反し、無効で、延長措置は「越権行為」との判断を示した。外出禁止令を司法判断で覆した初めてのケースとなった。最高裁判断により、外出禁止措置は効力を失う。飲食店の一部は、同日営業を再開し始めた。

 

ウィスコンシン州の知事は民主党だが、裁判所は保守派が主導権を握る。このため知事の判断を覆すことができた。ちなみに同州は大統領選の激戦州でもある。

 

 

ノースカロライナ州では裁判所の命令で教会の室内での集会が再開される

ノースカロライナ州では、知事が「10人以上の室内での教会の集いをしてはならない」と命じていた。これに対し、教会関係者は信教の自由を保障した合衆国憲法修正第1条に反するとして連邦裁判所に提訴。裁判所は16日、この知事の命令を不当として退けた。

 

裁判官は、「他の15州では宗教的な集いに関し例外的に集いを認めているし、宗教的集いがほかの集いと違って感染を拡大する可能性が高いとするのは行き過ぎだ」と判断した。

 

この他、ミシガン、ケンタッキー、イリノイの各州で、外出制限措置などの是非が司法の場で争われている。

 

 

恣意的な行政命令の不当さ

日本では、「宣言解除後も3密を避けるべき」という政府の方針が出されている。

 

各県への通知の中では、宣言を解除した地域でイベントを開催する場合、「屋内で100人以上かつ収容定員の半分以下の参加人数」であることを求めている。

 

だが、このような指針を継続すれば、アメリカであれば「メガ・チャーチを廃業に追い込むようなもの」で、国民から修正第1条違反だと訴えられかねない。

 

また対面よりもオンラインの販売を推奨する指針も、政府が恣意的にオンライン販売業者を推奨することに相当し、日本国憲法第22条を根拠として認められている営業の自由の侵害に当たると言える。

 

 

法の支配と自由権の擁護の議論のないまま、緊急事態条項の導入を急ぐのは危険

日本では、憲法上の私権の権利保障をどう担保するか、という点に関する活発な議論が日本で欠ける中、政府は国家緊急事態条項の導入に向けた議論を活発化させたいようだ。

 

確かに日本の憲法に緊急事態条項が欠けているのは、戦争などの非常事態を戦後日本の平和憲法が想定していなかったためであり、法の欠缺(けんけつ)である。外国による侵略や大災害に備え、検討されるべきであるのは言うまでもない。

 

だが同時に、コロナ禍で「半自粛」が長期化され、法の恣意的な運用の下、憲法で保障される自由権が脅かされる状況が続いている。この状況下での導入の検討は一段と慎重に行う必要がある。

 

そもそも国家緊急事態法が濫用されずに運用できるかどうかは、トップの資質によるところが大きい。

 

トップが、軍事のみならず経済状況をも勘案し妥当な判断を下さなければ不況から恐慌を招くことさえある。このため国民がトップの資質を見極める機会が保障される、大統領制とセットである改憲が望ましい。

 

また国家として「小さな政府、安い税金を目指す」という国是が定まっていなければ、大権の行使と同時に、財政支出の増大を招く。日本では「100%の休業補償がつくロックダウン(都市封鎖)法案を整備する必要がある」(国民民主党の玉木氏)という議論もある。こうした提案が将来実現されることになれば、内閣総理大臣に対する大権の付与で、より大きな政府となる可能性が極めて高い。このため、憲法改正案には「小さい政府」や「安い税金」を同時に盛り込むべきだろう。

 

さらに恣意的な政府の指針に異議を唱えられるような資質が、国民にも求められる。米ミシガン州では経営を強行した理髪店の護衛に銃を所持した集団が集まり、店の再開を支持する国民が出現し、アメリカで注目を集めている。

 

日本人にとっては理解しがたい乱暴な行動に見えるかもしれない。憲法上の自由権は、守らなければ奪われるものだという危機感が前提にあると考えれば理解しやすい。

 

一方、日本では憲法で保障される権利が侵害されても、国や地方政府を提訴するどころか、

むしろ休業補償がもらえることに依存したり、営業を再開する会社を取り締まる自粛警察が流行ったりする。こうした中で、日本で緊急事態条項を創設すれば、政府の専制的支配を許す手段となりかねない。

 

大川隆法・幸福の科学総裁は、『大恐慌時代を生き抜く知恵─松下幸之助の霊言─』の「まえがき」で、コロナ危機に便乗して条項を創設することに苦言を呈した。

 

憲法記念日の今日、政府は、コロナ・パンデミックに便乗して、改憲に緊急事態条項を盛り込もうとしている。私は改憲論者だが、今、日本がナチス・ドイツに似てきているのを感じている。そんなに北朝鮮や中国のような国になりたいのか。(中略)今、必要なのは知恵であって、法律による強制ではない。マスコミがゲシュタポになり、一般国民が、密告者になる国にはしたくない。今、必要なのは、信仰心と自由、各人の独立心である

 

マスク氏のような独立自尊の精神を持った国民と、そしてそれを啓蒙するマスコミの存在が前提にあって、国家緊急事態条項は初めて機能するのではないか。活発かつ慎重な議論が求められるところだ。

(長華子)

 

【関連書籍】

『新・日本国憲法 試案』

『新・日本国憲法 試案』

大川隆法著 幸福の科学出版

 

『大恐慌時代を生き抜く知恵』

『大恐慌時代を生き抜く知恵』

大川隆法著 幸福の科学出版

 

『P.F.ドラッカー「未来社会の指針を語る」』

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大川隆法著 幸福の科学出版

 

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タグ: 国家緊急事態条項  改憲  新型コロナウイルス  営業停止  テスラ  外出規制  訴訟  教会  3密  

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