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《本記事のポイント》

  • トランプ政権と米議会が中国による技術盗用への対策を本格化
  • 一部の米大学でも、中国排除が進んでいる
  • 日本も具体的な対策を打たなければ、中国の軍事力を下支えすることに

トランプ政権下のアメリカで、中国による最先端技術の盗用を阻止する動きが加速している。

米商務省は、人工知能(AI)やゲノム編集など14分野の新興技術について、輸出規制強化の検討を開始している。昨年11月には、「特定の新興技術に関する規制の見直し(Review of Controls for Certain Emerging Technologies)」と題した先行公示を、連邦官報で公表した。1月10日付読売新聞によると、今春にも具体的な規制対象などを公表する予定だという。

4日には、米上院情報特別委員会のマーク・ワーナー副委員長(民主党)とマルコ・ルビオ委員(共和党)が、中国など外国勢力による技術盗用の阻止などを目的とした専門組織をホワイトハウス内部に設けることを求める、超党派の法案を提出した。

アメリカでは、政権と議会が、着々と中国対策を進めている。

米大学でも中国人スパイへの警戒心が高まる

中国人留学生や中国人教授による技術盗用が問題となっている米大学でも、一部で中国排除の動きが起きている。

米名門大のマサチューセッツ工科大学(MIT)が昨年末に発表した早期出願者の合格者に、中国出身の学生がいないことが明らかになった。世界486高校の707人が合格したが、中国の高校は一校もなかったという(2日付大紀元)。

テキサス工科大学も、「(中国政府が進める)千人計画に参加する教員を処罰する」という声明を発表し、客員教授に就任する予定だった中国人教授の招へいをキャンセルした。この「千人計画」とは、中国の科学技術発展に寄与する人材をリクルートするプログラムのことを指し、2008年の実施開始からすでに8000人の専門家を募っているとされる。

米国防総省は昨年6月、同計画について、米下院軍事委員会の公聴会で「目的はアメリカの知的財産を獲得することにある」と指摘。すでにFBIが、千人計画のメンバーである中国人教授や中国人技術者を、重要技術情報を盗んで中国企業に渡したなどの容疑で逮捕している。

日本の国費で「千人計画リクルーター」が育った

アメリカが中国排除に向けて本格的に舵を切る一方で、日本政府は危機感がほとんどないようだ。

大紀元が報じたところによると、日本政府は6億円以上の研究費用を投資し、千人計画のリクルーターを育ててしまったという(2018年8月10日付)。

西安電子科学大学を卒業した王波氏は、筑波大学で博士号を取得し、「国立産業技術総合研究所」に勤務。2005年に筑波で「つくばテクノロジー」というハイテク企業を設立した。同社に対して、日本政府は6億円以上の研究費用を援助したとされる。

その後王波氏は、中国の西安で「西安筑波科学技術有限公司」を創業し、航空・宇宙や原子力発電、軍事などにもかかわる「レーザー超音波可視化検出器」を開発するなど、中国の先端技術産業の進歩に大きく貢献している。

こうした"功績"が認められ、2010年に王波氏は千人計画の人材採掘メンバーに選出されたという。「来る者拒まず」の姿勢でいれば、技術も資金も人材も絞り取られてしまうということを端的に示した事例だ。

中国の軍事力を下支えすることのないよう、日本でも具体的な対策が急務だ。

(片岡眞有子)

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