《本記事のポイント》

  • 停電は「苫東厚真発電所」に依存した結果
  • 特定の火力発電所に依存しているのは全国共通
  • 「脱原発の安全神話」からこそ目覚める時

北海道を襲った最大震度7の地震によって、道内全域が「ブラックアウト(停電)」の状態に陥った。

主要な公共交通機関も機能停止し、食料品店は冷蔵庫が使えず、金融機関のATMなどもストップ。外来診療を取りやめる病院も続出した。中でも、札幌市内の病院では酸素呼吸器が止まり、0歳の女の子が重症となった。

秋口の大停電はまだ不幸中の幸いだったかもしれない。もし真冬の北海道で同じことが起きていたら、どのような被害が出ていたか、想像するだけで恐ろしい。

停電は「苫東厚真発電所」に依存した結果

今回の大停電が起きた原因は、電力供給を特定の火力発電所に依存していたことだった。

北海道電力には泊原子力発電所があった。しかし、2012年の定期点検以降、再稼働できていない状況だ。民主党政権の"遺産"である原子力規制委員会が「近くに活断層があるのではないか」として審査を長引かせてきたためだ。

そのため北海道では、電力供給の7割弱を火力発電所に依存せざるを得なくなっていた。

さらに全部で11カ所ある火力発電所の中でも、苫東厚真火力発電所がその出力の4割を担っている。そして地震発生時には、道内の電力供給の半分を担っていた。

今回の地震はまるで狙ったかのように、同発電所のある厚真町の地下が震源地となった。

同発電所は一時停止し、道内の電力需給バランスが大きく崩れた。それにより、全域の火力発電所もドミノ倒しのように停止したのだ。

特定の火力発電所に依存しているのは全国共通

特定の火力発電所に依存しているのは、北海道電力だけではない。

例えば東北電力は、東通原発と女川原発が止まっており、電力の75%を火力発電に頼っている。そして、火力発電の中でも、互いに12キロメートルしか離れていない新潟火力発電所と東新潟火力発電所とで、出力の45%を担っている。新潟県には中越地震などもあったが、この二カ所が止まれば、電力供給は極めて不安定になるだろう。

東京電力は、福島第一原発と第二原発の事故以来、電力の90%を火力発電に頼っている。その中でも、東京湾沿岸の発電所が出力の74%を担っている。首都直下型地震などが起きれば、関東全域で電力供給がおぼつかなくなる。

中部電力は、浜岡原発が止まっているため、電力の86%を火力発電に頼っている。その中でも、伊勢湾沿岸の発電所(知多湾、渥美湾含む)が出力の87%を担っている。南海トラフ地震などでこの地域が被災すれば、中部全域の電力供給がおぼつかなくなる。

北陸電力は、志賀原発が止まっており、火力依存度は56%。その中でも、富山湾付近にある、富山火力発電所、富山新港火力発電所、七尾大田火力発電所が出力の67%を担う。

四国電力は、伊方原発が3号機しか動いておらず、火力依存度は73%。その中でも、徳島県阿南市の橘湾にある、阿南市火力発電所、橘湾火力発電所が出力の52%を担う。同地域も、南海トラフ地震の被害に遭いうる。

「北海道大停電」は、どの地域でも起きる。むしろ、火力への依存や、特定地域の発電所への依存という点では、より危ない場所もあるのだ。

「脱原発の安全神話」からこそ目覚める時

各所の火力発電所を襲うリスクは自然災害のみではない。

一般的な耐用年数である40年を超える「老朽火力」と言われる発電機は、全国の発電機の4分の1を超えている。これらも、原発を補う電力供給をするため、止めるに止められないのだ。

電力需要が高まる夏などには、定期点検を繰り延べて稼働する火力発電機もあり、蒸気漏れなどのトラブルも増えている。

そもそも、国のエネルギーを化石燃料の輸入に依存している状況も、相当危ない。日本は石油問題を一つの発端として、先の大戦に突入せざるを得なくなった。そして石油危機をきっかけに、高度経済成長も止まった。エネルギーは、この国の繁栄と存続にかかわる急所なのだ。

台風21号において各所の空を舞った太陽光パネルといい、原発を忌避することのリスクが目立ちはじめた。日本人は「脱原発の安全神話」からこそ目覚める時だ。

(※各電力会社の火力依存度は経済産業省資源エネルギー庁「発電実績(2018年5月)」を、特定火力発電所への依存度については各電力会社公表の最大出力値を参照し、編集部算出)

(馬場光太郎)

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