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《本記事のポイント》
- 日本のGDPに対する押し上げ効果は、中国がアメリカを抜いた
- 利益を追求するグローバル企業が、結果的に、ナチス・ドイツの侵略に加担した
- グローバル企業こそ、政治リスクを見抜き、地球的正義を考え、愛国心を持つべき
戦後、一貫してアメリカの影響下にあったアジア経済が、中国に取り込まれつつある。
6日付日本経済新聞によると、2015年のデータをもとに、各国の投資や消費(最終需要)が1%増えれば、日本のGDPに対する押し上げ効果は、27億ドル(約3000億円)のアメリカを抜いて、28億ドル(約3100億円)だった中国がトップに立ち、日本の対中貿易依存が加速していることが分かった。2030年には、日本や東南アジアに対する中国の経済波及効果は、アメリカより4割増え、アジア全体が「中国化」していくという。
軍事力を拡大させている中国への貿易依存度が高まれば、それだけ政治上のリスクを抱えることになる。
米調査会社ユーラシア・グループは、「2018年の世界の10大リスク」を発表し、中国の影響力拡大を1位にしたが、世界全体が中国とどのように付き合うべきかを思案している。対応のヒントになるのが、欧州を席巻したナチス・ドイツの先例だろう。
ナチス・ドイツに侵略を許した理由は、戦争に対する恐れなどから起因した周辺国の「宥和政策」だ。
イギリスのチャーチル元首相は後年、「第二次世界大戦は防ぐことができた。宥和策ではなく、早い段階でヒトラーを叩き潰していれば、その後のホロコーストもなかっただろう」と政策の失敗を認めている。
グローバル企業とナチス・ドイツの黒い関係
しかし、それだけではない。実は、グローバル企業が金儲けに走り、ナチス・ドイツの台頭に手を貸した面もある。
ビッグ3の一角である米自動車メーカーのフォードは、かつて、ドイツ軍の軍用車両の4割程度を製造した。同じく、自動車メーカーのGMも、ドイツ空軍の中距離爆撃機Ju-88や、ジェット戦闘機Me-262の重要な部品を供給した。
さらに悪名高いものとしては、IBMがナチス・ドイツに販売したパンチカード「ホレリス」が、ユダヤ人を特定する機器として使われ、「効果的な大量殺戮」を可能にした。
当時のアメリカは、ナチス・ドイツに対して「中立」を表明していたが、裏では、同国への投資や武器輸出に熱心だった。この行為は、企業の利益を最大化させるためだが、結果的に、侵略の片棒を担いでしまった。
日本企業が愛国心を持つべき理由
翻って、現在。日中関係は良好とは言えず、将来的に、両国が軍事衝突する可能性もある。他国を侵略したナチス・ドイツのように、中国は、東シナ海や南シナ海を手中に収めようとし、台湾侵略を虎視眈々と狙っているのは周知の事実だ。
とすれば、中国に進出しているグローバル企業は、間接的に、中国の侵略行為に手を貸している可能性も否定できない。もちろん、すべての取引が、侵略に加担するわけではないが、企業経営者は、政治的リスクを正しく見抜き、地球的正義を選び取らないといけない。
日本企業も、国民を窮地に追いやる可能性があるビジネスであれば、応じるべきではないだろう。それが、企業が持つべき愛国心という名の"コンプライアンス意識"ではないか。グローバル社会だからこそ、企業は健全なレベルでの愛国心を持ち、日本の国益を考える必要がある。アジア経済が「中国化」しつつある今、その必要性は高まるばかりだ。
(山本慧)
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