水爆実験後、人民武力部を祝賀訪問する金正恩・第1書記。写真:KCNA/新華社/アフロ

2016年3月号記事

北朝鮮「水爆実験」の脅威から目を背けるな

金正恩は核を使う


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新年早々、北朝鮮が「水爆実験に成功した」との声明を発表し、日本中に緊張が走った。

だが、今回の実験を失敗と見る向きもある。日本の大手各紙は「水爆ではない可能性が高い」「前回の実験より威力は小さい」との専門家の見解を伝えた。米ホワイトハウスも、「北朝鮮の技術力や軍事力への評価を変えることは起きていない」とした。

核保有国になった北朝鮮

金正恩・第1書記を過小評価するのは危険だ。 米ハドソン研究所首席研究員の日高義樹氏は、本誌の取材に「正確には『水爆の一部』と言うべきですが、北朝鮮が水爆実験を行ったことは間違いありません。水爆は核を起爆装置として使いますが、爆発力が小さいのは、水爆の起爆装置と核融合反応の実験を行ったと考えられます」と語る。

米海軍大将のウィリアム・ゴートニー氏も昨年10月、米シンクタンクで「北朝鮮は、米本土に届くミサイルに載せる小型化した核弾頭や兵器をつくる能力を持っている」と述べた。

核の小型化に成功したということは、北朝鮮が核ミサイル保有国となったことを意味する。

北朝鮮が核開発に着手している疑いが高まった当初は、アメリカは北朝鮮に具体的軍事行動を行おうとしていた。

1994年にカーター元大統領が訪朝し、以後、北朝鮮の核には「話し合い」で対応することになったが、北朝鮮の暴走を止めることはできなかった。技術力を過小評価して、核開発を野放しにしてきたのだ。この流れは、中国が核大国へと"成長"したプロセスと酷似している。

金正恩に「常識」は通じない

核兵器を実戦で使うなど考えにくいという「常識」は北朝鮮には通用しないだろう。 何しろ、日本国民を拉致し、拉致被害者の命を外交カードに使うような野蛮な国家である。

前出の日高氏は「金正恩は朝鮮半島統一を目指す戦略を持っていますが、その際に核を使う可能性は非常に高い」と言う。

アメリカの軍事専門家も、何も手を打たなければ、北朝鮮は2020年までに100発の核兵器を持ち、日本に撃つことをためらわないと分析する(注)。

(注)Joseph S.Bermudez Jr. "North Korea's Development of a Nuclear Weapons Strategy"

次ページからのポイント

最悪を想定した国防政策を

緊急インタビュー 日高義樹氏

金政権を崩壊させるシナリオ