人物伝 孔子の生まれ変わりだった、大儒学者・佐藤一斎(後編)──時を惜しんで学問にはげむ大切さ、心の練り込み方

2026.04.20

江戸時代後期、岩村藩(岐阜県恵那市)に生まれ、明治維新前夜まで生きた佐藤一斎(1772~1859年)。

本誌5月号の「佐藤一斎『言志四録』から『人材の条件』を学ぶ──天御祖神の武士道と儒教」では、一斎は孔子の生まれ変わりであり、人々に「天」の御心を伝え、「心を練る」ことを学問の中心に据えていたことを紹介した。

また、Web版の前編では、江戸後期に87歳まで生き、多くの門人を輩出し、心を練り続けた「生涯現役人生」に迫った。

今回の後編では、一斎が教える、時を惜しんで学問にはげむ大切さ、心の練り込み方について紹介する。

本物の学問を通して志を固めた者は、邪なものを退ける力を持つ

『言志四録』では、時を惜しんで学問に励むことの大切さが説かれる。

「人は若く元気な頃は時を惜しむことの意味を知らない。知っていてもたいして惜しむには至らない。四十歳を過ぎて後、初めて時を惜しむことを知る。だが、すでに知った時に精力が次第に衰えてくる。ゆえに人が学問する際には、すべからく若き日に志を立て、勉め励む必要がある。そうでなければ、後年に百たび悔いても何にもならない」

*以下、原文

(「人は少壮の時に方(あた)りては、惜陰(せきいん)を知らず。知ると雖(いえど)も太だ惜しむには至らず。四十を過ぎて已後、始めて惜陰を知る。既に知るの時は、精力漸く耗せり。故に人の学を為むるには、須らく時に及びて立志勉励するを要すべし。しからざれば則ち百たび悔ゆるとも亦竟に益無からむ」川上正光全訳注『言志四録(一)』講談社刊)

一方、年を重ねてから学問に取り組む者に対しては、「老人に取り返せる歳月はない。現役世代に負けず、決死の覚悟で精進すべし」と檄を飛ばす。

「肉体の血気には老人と青年には大きな違いがある。だが、心から発する志には老人と青年の間に違いはない。だから、老人が学ぶ時は、いっそう志気を奮い起こし、青年や壮年に負けてはならない。青年や壮年は残された歳月があり、たとえ今日学ばずとも、未来に償える可能性はある。しかし、老人に取り返せる歳月はないのだ。今日学ばなくても明日があるなど、ゆめゆめ語ってはならない」

*以下、原文

(「血気には老少有りて、志気には老少無し。老人の学を講ずるには、当に益(ますます)

志気を励して、少壮の人に譲る可からざるべし。少壮の人は春秋富む。仮令(たとい)今日学ばずとも、猶(な)お来日の償う可き有る容(べ)し。老人には則ち真に来日無し。尤(もっと)も当に今日学ばずして来日有りと謂うこと勿(なか)るべし」川上正光全訳注『言志四録(二)』講談社刊)

儒学の世界では「小成老いやすく学成り難し」と説かれる。一斎もまた、それを痛感し、流れてゆく時の中で「永遠なるもの」をつかみ取ろうとしていたことが伺える。

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タグ: 佐藤一斎  言志四録  儒学  孔子  学問  生まれ変わり  儒教  人物伝  武士道 

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