アメリカはもはや核でロシアを脅せない!? ウクライナ戦争はどこまでエスカレートするのか【HSU河田成治氏寄稿】
2023.01.22
《本記事のポイント》
- 強化されるロシアの継戦能力
- アメリカはもはや核でロシアを脅せない
- ゼレンスキー大統領の戦略は戦禍の拡大を招く
河田 成治
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。
緊迫が続くウクライナ戦争ですが、気になるのはアメリカやロシアの継戦能力でしょう。
ウクライナ国防省情報総局は1月4日、ロシア制裁にかかわらず、ロシアの巡航ミサイルは戦争前と比べて約2倍の毎月50発ほど増産されていると報告しました。これは年換算で約600発であり、アメリカのトマホークの年間生産数100~150発に比べて数倍になります。
また昨年12月にロシア国防省が開催した拡大幹部評議会で、2023年の軍事大方針として以下の大枠が示されました。
「ロシアはウクライナ戦争を強い意志で継続する。北大西洋条約機構(NATO)との対決姿勢をいっそう強め大々的な軍事力の増強を図る」
たとえば今後のスウェーデン・フィンランドのNATO加盟を考慮して、ロシア北西部で軍事力を増強するとしているほか、これまで約100万人であったロシア軍の総兵力を、1.5倍の150万人にまで大増強すると述べています。
これは、ロシアは今後、ウクライナという局地戦を超えて、NATOとの本格的な大規模戦争に備えるという意思表示にほかなりません。
アメリカはもはや核でロシアを脅せない
前述のロシア国防省拡大幹部評議会では、ロシア軍は「戦略核」の91.3%を近代化し、戦闘準備態勢が向上したと述べています。
「戦略核」の近代化とは、RS-28サルマートなどアメリカ大陸を狙う最新の核ミサイル(ICBM)が配備に就いたことを意味しているのですが、実はこのサルマートは恐るべきICBMです。
1発のサルマートミサイルに、最大24個のアヴァンガルドというマッハ20以上で飛翔する極超音速滑空核弾頭を搭載可能で、各弾頭が別個の目標を精密に攻撃します。しかしアメリカは、このタイプの核弾頭を迎撃する手段を持っていません。
しかもサルマートの最大射程は18,000kmとみられ、従来の最短ルートの北極圏経由を避けて、警戒監視とミサイル迎撃が手薄な南極回りでも北米大陸を攻撃できる能力があります。
つまりロシアは、北米大陸を核攻撃できる態勢を大幅に強化しつつあるのです。
これでアメリカは、ロシアを核で脅すことはますます難しくなりました。言い換えれば、ロシアはアメリカの核報復を恐れず、ウクライナに核を使いやすくなったということです。
たとえて言えば、ロシアの長い槍(戦略核)でアメリカを牽制して手出しが出来ないようにしておいて、もう一方の短い槍(戦術核)で、ウクライナを突き刺せる環境が整ったのです。
今後、NATOが主要兵器をウクライナに提供し、ロシア軍を劣勢に追い込むのなら、それはウクライナの勝利にはならず、むしろロシアによる核攻撃の可能性を高めることになるでしょう。
ゼレンスキー大統領の戦略は戦禍の拡大を招く
その後は最悪の場合、東南部がロシア領となり、それ以外の中西部は緩衝地帯(中立)になるなど、ウクライナの主張する領土の一体性は難しくなります。しかも、その地域は破綻国家としてのみ存在するか、もしくは国連PKOの管理下に置かれることもあり得ます。
いずれにしても好ましい未来ではありません。ゼレンスキー大統領が戦争の継続を求め続ける限り、それはNATO軍の介入と戦禍の拡大へとつながり、その結末は悲惨なものとなります。
現時点での最善の道は、ロシアの支配した地域を認め、残りのウクライナを中立国とした上で、一刻も早く停戦を結ぶ以外にないように見えます。
【関連書籍】
いずれも 大川隆法著 幸福の科学出版
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