世界戦争進行中! 中国は「海警」で尖閣を取りに来る その時に備えて日本はどうすべき? 【HSU河田成治氏インタビュー】
2020.11.29
2020年11月24日、会談に臨む中国の王毅国務委員兼外相(左)と茂木敏充外相。写真:代表撮影/ロイター/アフロ
《本記事のポイント》
- 今持つべきは「世界戦争が進行中」という認識
- 中国の大戦略は、日米同盟分断と経済的取り込み
- 大問題の「海警」に武器使用を認める法改正へ
中国の王毅(おうき)国務委員兼外相がこのほど来日し、茂木敏充外相や菅義偉首相と会談した。
尖閣問題について王氏は、「真相が分かっていない日本の漁船が釣魚島(尖閣の中国名)周辺の敏感な水域に入る事態が発生している」と主張。中国側としては「やむを得ず、必要な反応をしなければならない」と述べ、「引き続き自国の主権を守っていく」といった"居直強盗的"な発言をした。これに対し茂木外相がその場で反論しなかったため、各方面から批判が噴出した。
今後、アメリカがバイデン政権になった場合、尖閣を含めた日本の安全保障を取り巻く環境はどうなるのか。ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)で安全保障学や国際政治を教える河田成治アソシエイト・プロフェッサーに、日本はどう備えるべきかについて話を聞いた。(聞き手 長華子)
中国は「だるまさんが転んだ」方式で、奪い取りに来る
河田 成治
11月28日に航空自衛隊の入間基地で「航空観閲式」があり、菅首相のLIVE中継の訓示を見ました。災害派遣やコロナでの活動を称える一方、日本を取り巻く安全保障環境は厳しくなってきていると述べておきながら、「誰からの脅威で何を守るのか」をぼかして曖昧にしていたところはいただけませんでした。これは「中国を刺激したくない」という気持ちの表れでしょう。
王氏が来日し、「尖閣は中国の領土」と言い放ったばかりであるのに、防衛の最前線の任務に就く自衛官を前にして、「中国」や「尖閣」に言及しなかったのは、異常というほかありません。
中国の「現状変更」の基本スタイルは「だるまさんが転んだ」方式です。後ろを向いて目を瞑っている間に、猛ダッシュをかけてきます。振り返って睨(にら)めば、ピタッと止まりますが、決して後退しません。獲得した権益を決して手放さないのが中国なのです。
バイデン政権の誕生を見越した中国は、早々と猛ダッシュモードに入りそうな気配ですが、菅政権は、経済的な利益や来年のオリンピック開催のために、中国を刺激したくないと考えており、それがかえって中国に「猛ダッシュ」をさせ、日本の安全保障を脅かしかねないやり方を取っているように見えます。
今持つべきは「世界戦争が進行中」という認識
まず私たちは、中国が「生物兵器を使った世界戦争」を仕掛けているという認識を持つ必要があります。
複数種のウィルスを中国が作っていたり、コロナ自体が変異していたりした場合、ワクチンの開発が追い付かず、その開発次第では、この戦争が10年続くことも覚悟しなければならない状況にあります。
中国は、バイデン政権のうちにアメリカの覇権を終わらせることを目指して、生物兵器・サイバー兵器・宇宙戦争などの「目に見えない戦争」を継続的に仕掛ける可能性もあります。
対日政策においても、中国政府は現在、戦争の一環としての戦略をとっていると見るべきです。
大戦略は日米同盟分断と経済的取り込み
中国の大きな戦略としては、(1)「日米分断」、(2)「日本の取り込み」が挙げられます。
(1)日米分断
まず日米同盟の形骸化、空洞化を狙ってくると考えます。国際政治の理論の中に「同盟理論」というのがありますが、同盟が衰退もしくは解体する要因は3つあります。
1つ目は、パートナー国の責任を果たす能力や意思に、疑いが生じた時です。バイデン政権が日本防衛への約束を守るかどうかに、日本が疑心暗鬼になれば、日米同盟は揺らいでいきます。オバマ政権時には、まさしく日米同盟の未来に不安を感じました。
2つ目は、脅威の減少です。当面このシナリオはありません。
3つ目は、国内政治の大変動によって国益の定義が変わってしまった場合です。日本とアメリカの一方、または両方が、中国の経済力に"幻惑"されて安全保障上の脅威に目を瞑り、国益の優先順位を、国家の自主独立や自由よりも、経済的利益の方に置いて、中国と共生しようとする場合も、これに当たるでしょう。
(2) 日本の取り込み
王氏が訪日した目的も、日中間の経済交流を活発化し、観光客の往来を増やし、弱体化した日本経済を助けるというエサで釣って、日本を取り込む政策の一環に見えます。
この経済面での取り込みは、馬英九政権時代の台湾政策や一帯一路の政策を想起させます。
台湾では、馬政権時代に中国経済に依存する構造になってしまったことで、その後に中国にとって好ましくない蔡英文政権が誕生すると、中国は、自国の観光客の台湾への渡航制限を行うなど、経済を武器に蔡政権に圧力をかけたのです。
経済による取り込みは、中国による常套(じょうとう)手段だという自覚を持つ必要があるでしょう。
バイデン政権になったら、同盟国をなだめて何もしない
バイデン政権は、中国に対してどう出るでしょうか。
政権の顔ぶれを見ると「国際協調主義」の印象です。米中間の対立は対話による調整が可能だと考えているでしょう。したがって対話を阻害する要因になることは、アメリカが嫌がるようになるかもしれません。日中関係についてもアメリカは、尖閣などで日中間の紛争に巻き込まれる恐れがあるため、緊張緩和や安定的な関係を日本に求めてくるのではないかと思います。
同様に、中国と台湾の間の緊張が高まることも、アメリカは好ましくないと考え、中国を刺激するような台湾支援策を取らなくなる可能性は高いと思います。私は基本的に、米台関係は「米中関係の変数」と見ています。つまり米中間が対立すれば、アメリカの台湾への関心は高まるが、米中間が接近すれば、台湾への関心は下がるということです。バイデン政権が中国との関係修復に入ろうとするなら、台湾に冷たくなる恐れがあるのです。
つまり今後のアメリカの対中政策は、「アメリカが同盟国をなだめる側に回って、中国が暴れないようにする」という「中国の顔色をうかがうものになる」のではないかと予測します。
中国の「海警」は武器使用ができるよう法改正を準備
こうした中で、日本にとって危惧されるのは尖閣問題です。バイデン政権は、表面上は日米同盟の強化を謳うとは思いますが、尖閣のような局地的な争いにおいては、共同防衛の信ぴょう性が低くなるため、同盟強化は絵に描いた餅になるかもしれません。
しかも中国は、「海警」が「武器使用」できる法案(海警法草案)を作成し、12月3日までにパブリックオピニオンを募った後に、採択する予定になっています。
外国船が中国の管轄する海域で違法に活動し、海警局の停船命令などに従わない場合、海警の武器使用を認められるなどの内容になっています。要するに、この法案が成立した場合、海上保安庁の巡視船を攻撃できるようになるということです。
中国の海警は2018年の段階で、人民解放軍と同様に、中国共産党中央軍事委員会の一元的な指揮を受ける組織となりました。つまり海警は「軍隊」になったということです。
また18年改正の「武警法」では、それまで曖昧だった平時の任務に「非戦争(的)軍事行動」が明記されました。つまり平時に、軍隊として行動する任務が与えられたのです。
海警で、尖閣を占領してくる
問題なのは、2020年11月に明らかになった「海警法草案」の中身です。ここには、「中国が自国の管轄海域と主張する海域において、海警の命令に従わない外国の軍用船舶や非商業目的の政府船舶に対して『強制措置』を講じる権利がある」と明記されています。
つまり、日本の海上保安庁の巡視船はもとより、海上自衛隊の艦艇に対しても、「強制措置」を取る権利があると宣言したのです。
海上保安庁などの政府公船や、海上自衛隊などの軍用船舶は、国家の主権を表しますから、国際法上は沿岸国の法執行に対する「免除の特権」があります。それにもかかわらず、「命令」し「強制措置を講じる」とした、この法律の草案は、二重の意味で国際法違反です。
日本にとって重大な問題は、強制措置として武器使用を認めるとしたことです。海警法44条には、「携行武器の他にも、艦艇や航空機に搭載された武器を使用することも可能」とあります。
つまり海警は、速射砲だけでなく、場合によってはドローンなどからミサイル等を使用する恐れもあるということです。45条には、「警告するには遅すぎる場合や、警告がより深刻な有害な結果につながる可能性がある場合は、武器の直接使用を許可する」とありますので、警告なしで発砲してくることもあり得ます。
この法改正は何を示しているのでしょうか? 私には、中国は海軍ではなく、海警だけで事実上の戦争を仕掛け、尖閣を占領する意志があるように見えてなりません。海警を使えば、自衛隊は法律上、武力行使がたいへん難しくなりますし、その場合は米軍も共同防衛ができないからです。
2015年に改訂した「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)で、日本防衛の役割分担を取り決めているのですが、その中で「自衛隊は、尖閣などへの攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する」「米軍は、自衛隊の作戦を支援する」と定めています。つまり尖閣防衛の第一義的義務は、日本が負っています 。したがって、尖閣侵攻の事態に、自衛隊が動かないのに、米軍が自動的に参戦することはありません。
大川隆法・幸福の科学総裁はこのほど、インド神話に登場するシヴァ神からの黙示録として、日本近海で巨龍が暴れる夢をご覧になりました。救援にかけつけた米軍などは、巨龍に最初の弾丸を撃つべきは日本であると言ったものの、自衛隊は攻撃する法律上の根拠がないとの理由で、砲弾やミサイルを撃ちませんでした。そうした事態がいつ起きてもおかしくない状況が刻一刻と迫っています(『シヴァ神の眼から観た地球の未来計画』参照)。
また大川総裁は、11月8日に行った法話「アメリカ大統領選について」の中で、中国の海警法を危惧し、きっちりと言うべきことは言うスタンスを取ることの大切さを指摘しておられます。
冒頭の外相会談での「尖閣は中国の主権下にある」という王氏の主張に対し、茂木氏は残念なことに反論しませんでした。日本側が反論しないことを見越した上で、王氏はわざと尖閣問題を持ち出し、海警法を将来的に適用する根拠にするという、あざとい意図を見抜けなかったのです。
今からでも遅くありません。日本は中国の海警法を厳しく批判すべきです。ましてや、尖閣周辺海域などの日本の領域で適用することは、明白な「主権の侵害」であり、自衛隊が自衛措置を取り得る事態になると警告し、声明を出すことが必要です。それだけでも抑止力を高められます。
そして、海警が行動に出る場合は、組織的かつ計画的なもので、武力攻撃事態であると法解釈を行い、自衛隊が反撃できるよう措置を講じなければなりません。さらに尖閣諸島に、自衛官を配置すべきです。民間人は、人質に取られる可能性もあるからです。
バイデン政権誕生なら、米軍の介入はまずないと見て、中国が動き出す恐れが出てきました。尖閣有事はすぐそこに迫っています。一刻も早い対応が求められています。
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