河野外相訪露:中露離間に失敗すれば、「現代のポーランド侵攻」を招く

2019.05.11

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《本記事のポイント》

  • 米露間の対立軸となっている北朝鮮、ベネゼエラ、トルコ問題
  • 露を西側に引き入れなければ、「現代のポーランド侵攻」が起きる
  • 日露平和条約で、中露離間の布石を

河野太郎外相は10日、ロシアのモスクワでラブロフ外相との会談に臨んだ。

本会談の目的は「平和条約締結をはじめとする2国間の問題について意見交換する」こと。6月末に行われる日露首脳会談を前に、交渉進展に向けた突破口にしたいところだ。

そんななかで言われているのが、「アメリカとロシアとの関係がよくならなければ、日本もロシアとの関係を改善できない」という説だ。同盟国アメリカの立場を「忖度」しなければ身動きが取れないというのは、これまでの日本の外交の"基本路線"といえる。

しかし日本は、そのような受け身の姿勢でいいのだろうか。

米露の対立軸をつくる北朝鮮、ベネズエラ、トルコ

米露関係は、アメリカの「ロシア疑惑」が終結を見せるも、改善に向かっているようには必ずしも見えない。両国は、北朝鮮問題、ベネズエラ問題、トルコ問題などで対立しているためだ。

まず北朝鮮問題。5月3日のトランプ大統領とプーチン大統領の電話会談で、トランプ氏は北朝鮮の非核化に向けてロシアが圧力をかけることの重要性を強調した。

これに対し、プーチン氏は「北朝鮮による誠実な義務の履行には、制裁圧力の緩和という相互措置を伴わなければならない」と主張。北朝鮮の要求を支持した。

両国間には、非核化のプロセスをめぐり溝があることが明らかとなった。

またベネズエラ問題についても、相違がある。アメリカは、ベネズエラの民主派勢力が独裁者のマドゥロ大統領を追放しようとした際、ロシアが妨害したと見ている。

さらに米露間に横たわるのがトルコ問題だ。トルコは、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国でありながら、ロシアから地対空ミサイルシステム「S 400」を調達する予定でいる。プーチンが売り込みをして、東西分断を図っているのだ。

アメリカが「トルコがS-400を導入するなら、アメリカがトルコに導入を進めている戦闘機F35を売却しない」というと、ロシアはロシア製の戦闘機を売却すると踏み込んできている。

中国、ロシア、イラン、シリアの関係強化を防ぐ

もしこのまま米露の対立がエスカレートすれば、ロシア、中国、北朝鮮、イラン、シリア等の関係が強化されることになる。まさに冷戦構造に近づいてしまうのだ。

それを避けるために今必要なのは、ロシアを「西側」に引き入れるニクソン・ショックならぬ"トランプ・ショック"である。

ニクソン大統領の1972年の訪中は、当時、国家安全保障担当補佐官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏がニクソン氏に授けた戦略。当時、強大な力をもっていたソビエトに対抗するために、中国を味方にする作戦だった。

これは決して新しいアイディアではなかった。1930年代にフランスとイギリスは、ソビエトを味方に引き入れようと画策。しかし、この"婚談"は失敗。その結果、1939年に独ソ不可侵条約が締結され、1939年にナチスがポーランドに侵攻することができた。

現在も同じく、中露離間に失敗すれば、「現代のポーランド侵攻」、つまり中国による台湾や南シナ海への侵攻につながる。第三次世界大戦の火ぶたが落とされる未来が待っているということになる。

過去の歴史の失敗を振り返るとき、私たちは瀬戸際の時代を生きていると言わざるを得ない。

日露平和条約で中露離間の布石を

こうしたなか、日本は「米露関係が改善しなければ、日露関係も強化できない」といった言い訳に甘んじている場合ではない。

日本は米露の"かすがい"となるだけの外交力を持たなければならない。

幸い、トランプ政権にとって、ロシアはあくまでも「戦略的競争相手」であり、「敵」ではない。

ポンペオ氏も米ABCニュースで5日、「米露関係は新しい段階に入っていると思うか」という質問に「それを願っています。利害関係の重なる部分で、米露が協調するのは完全に理にかなっています」と発言するなど、両国の歩み寄りの可能性があることを強調した。

米露間に亀裂を生じさせる問題が多数存在する中でのこうした発言は、ロシアに歩み寄りたいトランプ政権の本音を表している。

もとよりロシアも米国との貿易戦争で"沈みゆく"中国と運命を共にしたくないはずだ。共同軍事演習を行うなど関係を深めているように見えるが、必ずしも中国を「友好」を深めていきたいパートナーだとは見なしていない。経済的な旨みがあるので、「お付き合いをしている」という関係だ。

日米露が結びつき中国を包囲する可能性はまだ残されている。

日本は、いったん北方領土問題を棚上げしてでも、「平和条約」を結ぶ方向で会談を進めるべきだ。それが中露離間の一助となり、アジアの平和を守ることにつながる。

6月末に行われる日露首脳会談を、歴史的に見て「重要」な会談としなくてはならない。

(長華子)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『日露平和条約がつくる新・世界秩序 プーチン大統領守護霊 緊急メッセージ』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=2109

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2019年1月15日付本欄 日露平和条約の交渉開始 北方領土の返還より、平和条約締結の方が重要

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タグ: 北方領土  訪露  ラブロフ外相  河野外相  日露平和条約  ロシア 

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