ジェームズ・マーティン非拡散研究センターのメリサ・ハンハム研究員が9日、米ジョンズ・ホプキンス大学が運営するブログ「38North」に、北朝鮮の生物兵器開発に関する記事を掲載した。

記事によると、1人の北朝鮮人科学者の男性が6月6日、フィンランドに亡命。彼は15ギガバイトに上る資料データを持っており、北朝鮮が自国民を生物・化学兵器の実験体に使っていると告白したという。

同日、北朝鮮の国営放送は、金正恩第一書記が農薬生産工場を視察している画像を公開。ハンハム氏は、その工場が大量の炭疽菌(たんそきん)生物兵器を生産するためのものである可能性が高いと指摘している。

この工場は、表向きにはバチルス・チューリンゲンシス(Bt)という、農薬に使用される細菌を精製するためのものだ。しかし、Btの生産方法と炭疽菌のそれとは非常に似ており、ハンハム氏によると、数日もあればこの農薬工場を炭疽菌工場に変えることができるという。

また、工場の画像には、民間・軍事のどちらにも使用できる機器が多く見られる。こういった機器は、日本を含む先進国41カ国から成る「オーストラリア・グループ」によって、輸出規制がかかっている。北朝鮮が、どのようにして規制の網を潜り抜けて機器を手に入れたかは定かではない。

農薬工場と、「農薬工場に化けた生物兵器工場」は、見分けるのが難しい。しかしハンハム氏は、もし北朝鮮が農薬を手に入れたいのであれば、工場をつくるより、農薬を合法的に輸入したほうが安上がりだと指摘している。規制がかかっている機器を、あえて輸入して工場をつくるということは、北朝鮮が生物兵器を製造していると結論付けざるを得ないとした。

生物兵器などは、核兵器と比べて低コストでつくれる。また、炭疽菌兵器は、風上にばら撒いて人口密集地を狙うため、誰が犯行に及んだのかが分からない怖さがある。日本や欧米諸国は、北朝鮮の核兵器開発にばかり目が行きがちだが、生物兵器や化学兵器の脅威にも注意を払うべきだ。

また、軍事面で使える技術が北朝鮮に渡らないように、オーストラリア・グループとの連携を強めつつ、ミサイル防衛の開発はもちろんのこと、生物・化学兵器に対抗するための医療開発や、非常事態のときに病院や自衛隊が迅速に対応できる体制を整えておく必要がある。(中)

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