米シンクタンクであり、一部に「裏のCIA」と呼ばれるStratfor (ストラトフォー)がこのほど、2025年までの世界を予測する報告書を公開した。

同シンクタンクは、政府に属さない情報会社であり、政治、経済、軍事など、あらゆるジャンルの情報を扱っている。スタッフには、元米国政府の要人や軍人が多く名を連ねている。

同報告書は、世界主要国の10年後に明確な予測を立てている。以下がその概要だ。

  • 人口減少と国力の低下により、中央政府の力が弱まり、ロシアは事実上分裂。
  • EUの失敗により、ドイツは衰退し、ヨーロッパではポーランドが台頭してくる。
  • 中東紛争はこの先も続き、トルコが大国として浮上する。
  • 中東戦争に疲弊したアメリカは、世界から引いていく。

以下は、東アジアに関する予測である。

  • 中国の「高成長」「低賃金」時代は終わり、次に来るのは、「低成長」と、そこから生まれる国民の不安が共産党政府を脅かさないようにするための、「独裁による圧政」と「国家主義・ナショナリズムの台頭」である。

  • しかし、国内の不安から国民の目を背けるために、中国が他国を侵略することはない。中国の特殊な地理条件のため、大陸で侵略を行うのは不可能に等しい。

  • また、中国は海軍を充実させているが、それを率いる経験をもった指揮官がおらず、アメリカのように多くの経験をもった海軍と張り合うことはできない。

  • 逆に、中国より豊富な海軍の伝統がある日本は、中東や東南アジアから多くの資源を輸入している上、アメリカが内向的になりつつあるため、自前の海洋戦力の増強を図るしかない。

  • 結果、中国は軍事拡張国家・侵略国家にはなれず、東アジアで主導的な立場に置かれるのは、「海洋国家」と「輸入大国」という性質を持つ日本である。

特に不安定な時期に入っている世界や東アジア情勢が、この通りになるとは限らないが、一つのシナリオとして検討する価値はあるかもしれない。

現在進行形で東南アジアに進出し、他国の領土を侵している中国が「軍事拡張国家にはならない」という視点は楽観的すぎると思われるが、「日本が豊富な海軍の伝統を持つ海洋国家」であることはその通りであり、中国よりも高い潜在力を持っていることは確かだ。

問題は、日本がその潜在力を引き出し、東アジアのリーダー国家たる気概を持てるかどうかではないだろうか。(中)

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