スマートフォン、略してスマホの利用時間が増えるにつれて読書する時間が減り、日本人の2人に1人は「全く本を読まない」と言われる。読書しないことの問題を、「広がる"読書ゼロ"~日本人に何が~」と題して、NHKの「クローズアップ現代」がこのほど、取り上げた。

番組では、スマホはインターネットという「巨大な図書館」にアクセスできるツールであり、また、スマホの利用により情報を処理する速度も上がると分析した。しかし、読書をしないと、自分の考えをまとめる能力は育たないという専門家の意見も紹介。20万冊の蔵書を持つというジャーナリストの立花隆氏が登場し、読書を通して、知識が手に入るだけでなく、著者の人生を追体験でき、感情や意思の刺激も受けられるため、知的訓練として読書の価値は高いとした。

今回、読書の時間を奪うものとしてスマホが挙げられたが、19世紀の思想家ハマトンの著書『知的生活』でやり玉に挙がったのは新聞だった。近年ではテレビやインターネットもそこに加えられるだろう。新しいメディアの登場のたびに、知識人が警戒するという構図は繰り返されてきた。

新聞を読めば誰でも、世界中の出来事を知ることができる。だが、その情報は夜にはゴミになってしまう。またテレビは受け身でも情報を得ることができるが、映像が中心で情報密度は低い。

番組では、読書の知的訓練としての価値に焦点を当てたが、書籍の情報価値はスマホに劣らないということを指摘したい。

スマホを使えば、どこにいてもネットにアクセスできる。ネット上では、様々な政府のレポートや、電子化された古い書籍が無料で手に入る。その意味では確かに、紀元前300年ごろのエジプトにあった、世界中の文献をすべて収容することを目指したアレキサンドリア図書館と表現するにふさわしいかもしれない。

しかし一方で、ネット上には個人のブログや発信者不明のうわさ話、根拠が示されない誹謗中傷も多く存在する。執筆者や編集者が責任を持ち、事実確認などの緻密な作業を経てつくられる書籍とは、情報の価値が全く異なる。

2人に1人が本を読まない状況だからこそ、読書が持つ価値は高まっているとも言える。(居)

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