北朝鮮と韓国が今年2月以降、中断している高官級協議を再開することで合意した。5日付産経新聞が報じている。

北朝鮮の事実上のナンバー2である黄炳瑞総政治局長は4日、仁川アジア大会の閉会式への出席を名目に韓国を訪問した。崔竜海党書記や金養建党統一戦線部長ら高官も同行し、大統領府の金寛鎮国家安保室長らと会談して、高官級協議の再開を合意した。

今回の訪韓は、昨年12月に中国とのパイプ役だった張成沢氏を処刑して以降、中国との関係悪化が続いている北朝鮮が、国際的な孤立と経済的な困窮を打破するために、韓国を懐柔するのが目的と見られている。これまで、北朝鮮はエネルギーや食糧の供給を中国に頼ってきたが、中国税関総署の発表によると、今年1月から8月までの8カ月間、中国からの北朝鮮向け原油輸出は統計上ゼロの状態が続いている。中国との関係は、いまだ修復できていないと見られる。

そんな中、5月の日朝局長級協議において、日本人拉致被害者などの再調査を行うという合意が実現したが、これには、日本から支援を引き出そうとする北朝鮮の思惑があることは否めない。

仁川アジア大会に関しても、当初、大規模応援団、いわゆる「北朝鮮美女軍団」の派遣が提案されていたが実現できず、大会終了間際になって今回の訪問となった。

日本と韓国に打開策を見出そうとする様子からも、北朝鮮の困窮ぶりがうかがえる。

だが、拉致被害者らに関する第一次調査報告が遅れた上、詳細は平壌で直接伝えたいと求めてきているように、主導権を握って、少しでも優位に交渉を進めようとする動きを露骨に示してきている。おそらく、南北統一を目指す朴槿惠大統領に対しても、同様のやり口を使ってくると予想される。

拉致問題の解決は日本政府の重要課題であり、家族の帰国を念願する被害者の家族たちの心情は察するに余りある。ただ、北朝鮮は国内で苛烈な人権弾圧や核実験をくり返し、6月にも日本海に向けての弾道ミサイルを発射した無法国家である。

日本はアジアの先進国として、この地域の平和と安定に貢献していくためにも、北朝鮮の体制を延命させたり、その横暴を助長させるような安易な妥協策を取るべきではない。

北朝鮮から人権弾圧がなくなり、民主化によって国民が解放される未来を目指していく必要がある。(雅)

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