尖閣諸島は依然、日中両国による一触即発の危機のなかにある。

中国の元最高実力者、トウ小平氏の生誕110周年を記念して、中国政府は国内各地で記念行事を催し、尖閣諸島をめぐるトウ氏の発言を収めた「トウ小平文集」をこのほど刊行した。

中国メディアは、トウ氏が1974年に「棚上げは(領土)問題が存在しないことでも、保釣(釣魚島防衛)運動を終わらせても良いことでもない」と述べた、いわゆる「尖閣棚上げ論」に焦点を当てて報道。習近平政権はトウ氏の発言を引用し、尖閣諸島領有をめぐる自国の主張を正当化する狙いがあるとされる。

一方、日本側はこの問題に関し、「領土問題は存在しない」との立場を貫いている。真実は、歴史的に、また国際法的に見てどこにあるのか。

尖閣諸島は元々、1885年から日本政府が現地調査を続け、単に尖閣諸島が無人島であるだけでなく、清国(当時の中国の王朝名)の支配が及んでいないことを確認した上で1895年、正式に日本の領土に編入したもの。この行為は、国際法に何ら違反しない。

第二次世界大戦後の1951年には、日本の領土を定めた「サンフランシスコ平和条約」において、尖閣諸島は日本が放棄した領土には含まれず、沖縄を含む南西諸島の一部として米国の施政下に置かれた。その後、1972年の「沖縄返還協定」によって日本に返還された地域にも含まれている。

そもそも、中国が尖閣諸島に関する独自の主張を始めたのは、1968年に行われた国連機関による調査の結果、同諸島周辺に石油埋蔵の可能性があると指摘された1970年代以降のこと。それ以前には、中国は同諸島が日本の領土の一部であるという事実に対して、何ら異議を唱えてこなかった。現在でも、それがなぜかについて何ら説明がないままだ。

トウ氏がいう「尖閣棚上げ論」についても、日中間でそれを「合意」したことを示す外交記録はない。またその内容は、トウ氏が1978年の福田赳夫元首相との日中首脳会談や、その後の記者会見で一方的に述べているものであり、日本の外務省の外交記録には日本側が「同意した」という記述はない。

要するに尖閣問題は、中国側の"言いがかり"によるものなのだ。

「改革開放」を旗印に経済の自由化を推し進めたことから、思想的に西側寄りと見られてきたトウ氏。だが、1989年の「天安門事件」で人民解放軍の投入を指揮し、民主化を志す若者を弾圧・虐殺した経緯もある。ウイグル、チベットなどの自治区で、異民族の人々への苛烈な人権弾圧を続ける習氏と同じく、「人権を軽視し、自らの主張を通すために軍事力を行使する」という側面があることを見落としてはならない。

大川隆法・幸福の科学総裁によるトウ小平の霊言(2010年5月収録)では、トウ氏の霊は中国を"西洋化"させた狙いについて、「敵の兵法を学び、それを利用して金を稼ぎ、軍事拡張をする」ためだったと語った。

独占禁止法違反だとして、外資排斥とも取れる動きを進めている習近平氏は、経済政策においてトウ氏と違いがあるかもしれないが、「軍事を増強し、領土拡大を目指す」という点で本質的には同じだ。日本はこうした歴代の中国の指導者の傾向をしっかりと踏まえ、言論の対外発信力の強化と、国防の備えを怠らないようにすべきだ。(翼)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『アダム・スミス霊言による「新・国富論」~同時収録 トウ小平の霊言 改革開放の真実』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=78

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