長らく続いた「ゆとり教育」から脱した日本教育は、いま新たな転換点を迎えようとしている。

2002年から実質的に開始された「ゆとり教育」において、小中学校においては学習内容、授業時間数が3割削減され、完全週5日制が実施された。これは、小学校では2011年度、中学校では2012年度に改訂学習指導要領が完全実施されるまで続いた。この「ゆとり教育」によって学力低下が起こったことをPISA(ピサ)という学力調査が示している。

PISAはOECD(経済協力開発機構)が実施する調査で、2000年から開始された。世界の15歳の男女を対象に、(1)数学的リテラシー、(2)科学的リテラシー、(3)読解力の3科目で義務教育の習得度を測る調査だ。ここでの日本のランキング推移は以下の通りである。

2000年  [数学的リテラシー]  1位   [科学的リテラシー] 2位  [読解力]   8位

2006年  [数学的リテラシー] 10位  [科学的リテラシー] 6位  [読解力]  15位

2012年  [数学的リテラシー]  7位   [科学的リテラシー] 4位  [読解力]   4位

この調査結果は実施年によって参加国数や調査実施科目数の変化はあるものの、一定の信頼をおけるデータである。この結果を見る限り、「ゆとり教育」実施後に大幅に日本の学力が下がり、結果的に学校教育が見直されて以降、学力が回復していることが分かる。

政府にとっても、有能な人材の輩出は国家百年の計における最重要課題の一つだ。上記データは、公教育の充実が基礎的な学力にいかに重大な影響を与えるかを証明するものと言える。

公立学校教育の充実に関しては保護者からの要望も強い。2005年には学力低下の不安から、小学生の塾費用が2002年比で16%増加したという調査結果もある(2005年12月15日付朝日新聞)。

そんななか、今年度から全国の公立小中学校で「土曜授業」が解禁された。その結果、東京都内では全62市区町村の8割以上にあたる50教育委員会が土曜授業を導入していることが、このほど読売新聞の調査でわかった。昨年7月に都PTAが行った調査では、保護者の8割が「土曜授業が必要」と回答しており、ニーズの高さがうかがえる。

文部科学省の調査では全国的にも4割の保護者が小中の土曜授業を希望しているとの結果が出ている。しかし、全国小中校の今年度実施率は14%にとどまり、保護者ニーズと教委や学校の意識にギャップが存在している。

先のデータにもあったように、公教育の充実は家計の負担軽減にもつながる。家庭の経済的な事情に関係なく、多くの子供たちがより良い教育を受け、個人の努力によって未来を切り開くことのできる社会が望ましいと考える。

(HS政経塾 数森圭吾)

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