細川護煕氏と小泉純一郎氏の元首相コンビが、また脱原発をかかげて共闘する。細川氏を代表理事とする一般社団法人「自然エネルギー推進会議」の設立総会がこのほど、都内で開かれた。

元首相コンビがそろって公の場に出るのは、2月の都知事選で、脱原発を争点として細川氏が立候補して以来になる。同会議は再生可能エネルギーの普及を研究するもので、脱原発の世論を高めることが狙いと見られる。細川氏は直接的に選挙に関わるつもりはないというが、周辺からは、来年春の統一地方選などに脱原発をかかげる候補がいれば、支援するという声も出ている。

総会で細川氏は、「目指すところはまず第一に(原発の)再稼働に反対し、原発から自然エネルギーに転換することによって実感できる経済、放射能の心配のない社会を作っていくこと」と語った。小泉氏は「(原発ゼロが)もう一年ですよ。原発なしに日本はやっていけないって、やっているじゃないですか」「原発のない国造りへ頑張る」とした。

こうした動きに対して自民党の石破茂幹事長は、「原発即ゼロと言われても、経済に与える影響も甚大なものになる」と批判する。現政権は原発を「重要なベースロード電源」と位置づけるが、国民の生命と安全を守る責任がある以上、最も現実的なエネルギー源である、原発の再稼働を前提とするのは当然と言える。

原子力規制委員会は慎重に慎重を期して審査しているが、原発を動かせない大手電力会社9社は、電気料金を13~37%値上げするなど、電気代はぐんぐん上がっている。こうした中での小泉氏の「原発ゼロで日本はやっていける」という発言は、あまりにも無責任ではないだろうか。「やっていける」ように見えるのは、企業努力によって維持しているからであり、その裏では多くの個人と企業の犠牲が支払われている。実際、今年に入って、電力を大量に消費して鉄鋼を作る電炉メーカー3社が、電気代の値上げが追い討ちとなって廃業に追い込まれた。サービス産業も含め、産業の発展には安定した電力供給が不可欠であり、このままでは日本の産業が衰退してしまいかねない。

さらに言えば、国民の命も守れない。昨夏は大飯原発がかろうじて稼働していたが、現在は定期点検に入っているため、日本には今、稼働している原発はない。再稼働審査で最優先されている川内原発の審査も遅れており、このままでいけば、今年は原発ゼロの夏を迎える見込みだ。万が一、大規模な停電にでもなれば、死者も出かねない。

細川・小泉両氏には、元首相という知名度を利用して活動する以上、公人として責任ある態度を示す義務があるだろう。また原発には、安定したエネルギー供給というだけでなく、核抑止力としての役割もある。首相経験を持つお二人ならばご存じだろう。

とまれ細川氏には、高い電気料金に耐え忍んでいる国民の意見をまず、聞いて頂きたい。それと共に、エネルギー安全保障と潜在的な国防力維持の観点から原発を守るべきだという、本欄の警告にも耳を傾けて頂きたい。(居)

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