衆院鹿児島2区補欠選挙が、27日に投開票され、自民党新人の金子万寿夫氏(67歳、公明推薦)が初当選した。無所属前職の打越明司氏、共産党の三島照氏、幸福実現党の松澤力氏は及ばなかった。

今回の選挙は、「徳洲会グループ」の公職選挙違反を受けて辞職した徳田毅元衆院議員の欠員に伴って行われた。ゆえに、どの陣営も「政治とカネ」の問題を意識し、「クリーンな選挙」を打ち出したが、それ以外の具体的な政策課題に関する議論は盛り上がらなかった。

消費増税後初の国政選挙ということもあり、選挙戦の勝利によって「安倍政権への一定の信任が得られた」との見方もあるが、自民党公認の金子氏が打ち出した政策を見ると、そういえるかどうかは疑問だ。

4月に8%となった消費税は、このままで行けば来年秋には8%から10%にさらに増税される。まだ、消費増税の影響が表面化していない段階でもあり、金子氏は消費増税については言及しなかった。経済政策として「地方版のアベノミクス」実現を訴えたが、「自民党政権になって動き出した政策課題を止めてはならない。与党代表が必要だ」と述べるのみで具体策は見えない。

また、「治安・テロ対策」は打ち出したものの、集団的自衛権の行使容認をはじめとした、安倍首相が進めようとしている国防政策については、公明党への配慮からなのか何も触れられなかった。

むしろ、安倍政権が本心で実現したい政策を打ち出していたのは、幸福実現党の松澤力候補だった。

アベノミクスのベースになっているのは幸福実現党の経済政策であることは、本欄でも繰り返し伝えてきた。ゆえに、アベノミクスの狙いである「雇用」と「収入」を増やすための具体策として、原発再稼動や、農林水産業の販路拡大や規制緩和、税制優遇による観光産業の振興などを訴えた。

また、経済にブレーキをかける消費増税は誤りであり、10%への再増税は絶対に阻止しなくてはならないと明確に訴えた。

集団的自衛権の行使容認をはじめ、国防の強化を公約に掲げたのも、6人の候補者のうち松澤氏だけだった。尖閣諸島をはじめ、守りが手薄な島嶼部の防衛強化策は待ったなしだ。国民の生命と安全を守ることは、政治の最も大切な仕事のはずだが、有権者の3割強が離島に住んでいる鹿児島2区において、国防強化が争点にならなかったことは残念だ。

普天間基地移設問題や、原発再稼動など、今までも自民党は選挙では聞こえのよい政策のみを訴え、選挙後に幸福実現党候補が訴えてきた政策を実行してきた。選挙の時には不利にならないように重要な争点から逃げ、選挙が終わったら選挙公約で訴えていなかったことや真逆のことを行うなら、何のために選挙があるのか。このような選挙のあり方をよしとするならば、日本は民主主義国家ではなくなってしまう。今回の投票率が同選挙区では過去最低の45.99%に止まったことからも、国民の選挙不信、政治不信が見て取れる。

政治家は、今、この国にどんな政策が必要なのかを考え抜き、正直に誠実に国民に訴えてもらいたいし、また、そのような政治家が選ばれる選挙であってほしい。(佳)

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