2014年5月号記事

4月下旬、約4年ぶりにオバマ米大統領が来日する。安倍晋三首相とアジアの安全保障などについて意見交換する予定だが、今後も日本の安全保障をアメリカに依存したままでいいのか。数年以内に私たちが目の当たりにするであろうアジアの大激変を予測し、日本がとるべき国防強化策について考える。

(編集部 小川佳世子、馬場光太郎、HS政経塾 森國英和)


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Part1

米軍のアジア撤退シミュレーション

「アメリカは世界の警察官ではない──」

昨年9月、オバマ米大統領はこう宣言し、内戦が続くシリアへの介入を見送った。「戦うアメリカ」の終わりを告げる、象徴的な出来事だった。

日本ほど、その影響を受ける国はないだろう。この国の防衛は、長らく「世界の警察官」であるアメリカの軍事力に委ねられていた。その警察官が「引退」すれば当然、日本の国防の根幹が崩れる。

上記の年表では、2030年までの、アジア地域における各国の情勢やアメリカの動きをシミュレーションした。これは単なるフィクションではなく、各国政府の発表や統計、国内外の識者やシンクタンクの予測を踏まえたものだ。

米軍のアジア撤退シュミレーション

  • 2011
  • 米議会で「予算管理法」成立
  • 2013
  • オバマ大統領
    シリア介入を見送り
  • 2016
  • 尖閣有事

    日米選挙戦に乗じ中国が魚釣島を実効支配

  • 民主党
    ヒラリー・クリントン大統領誕生

  • 国防戦略の転換で
    在韓米軍が3割に削減
    沖縄海兵隊が5割に削減
  • 2017
  • 朝鮮有事

    38度線は泥沼化。
  • 2018
  • 中国は空母「山東」を就役させる
  • 2019
  • 中国は空母「広東」を就役させ、空母3隻体制へ
  • 2020
  • 中国が台湾を併合

  • 2021
  • 台湾の台北市で「中国共産党創立100周年」の祝賀会
  • 2023
  • 米中の軍事費が逆転
  • 2025
  • 中国高官が米軍に「太平洋分割管理」を再提案
  • 2026
  • アメリカが日本に日米同盟破棄を通告
  • 2027
  • 日米同盟破棄


  • 中国が沖縄を「琉球自治区」として編入
  • 2030
  • 新たな「中華秩序」が出現

◆ ◆ ◆

2016年尖閣諸島は実効支配される

2016年夏、日本では衆参同日選が行われ、アメリカでも11月の大統領選に向け、本選挙が始まろうとしていた。日米の政府が動けなくなるこの時期に、有事が起きた。

漁民を装った中国人が尖閣諸島の魚釣島に上陸し、小屋を建て始めた。海上保安庁の制止にも激しく抵抗し、選挙中の自民党政権に緊張が走る。