中国の習近平国家主席はこのほど、軍の組織改革を担う「国防・軍隊改革深化指導グループ」を新設し、そのトップに就いた。同グループの初会合で習主席は、「軍の組織形態の現代化なくして、国防と軍隊の現代化はない」と話し、自らが陣頭指揮を取って軍の近代化を進めることを明らかにした。

今回の改革の目的としては、中国軍の未熟な運用能力の改善が挙げられる。これまでの中国軍の近代化は、最新鋭の装備導入や研究開発など「ハード面」を重視してきた。増加する軍事費を、空母や原子力潜水艦の建造、ミサイル技術の向上などに惜しみなく投入し、周辺諸国に警戒心を抱かせてきた。

しかし、装備だけは近代化しても、日本やアメリカと比べて劣る運用能力が、課題となってきた。例えば、2004年11月に起きた中国の原子力潜水艦による沖縄周辺の日本領海への侵犯事件では、国際法の理解が不十分な現場の指揮官らが、司令部の命令を無視したことが原因だった。また、一人っ子政策を始めた1970年代生まれが、今や軍人の7割以上を占めており、その世代は「甘やかされた坊ちゃん」と言われ「小皇帝」と揶揄されている。現場の教官は、一人っ子世代の精神力向上に頭を悩ませているという。

このような状態の軍に、改革を迫るのも無理からぬ状況だったと言える。だが、今回の習主席の動きは、こうした実情も「今までは」という話であり、「これからもそうであるということは許さない」という姿勢を示したものと言える。

こうした改革に着手できるのも、習主席の権力基盤が整ってきていることを意味している。胡錦濤・前国家主席は、主席に就任してから軍のトップに就くまでに、2年を要したが、軍を掌握できているのかという疑念は、政権末期までつきまとった。胡主席は2011年のゲーツ米国防長官との会談で、ゲーツ長官からその日に行われた中国のステルス戦闘機の試験飛行の話を切り出されたが、胡主席は試験飛行について知らされていなかったという。

一方の習主席は、就任から1年余りで軍のトップに就き、昨年だけで軍の要職人事を2度行った。これは異例のペースだ。さらには、各地で企業経営する軍部が好ましく思わない汚職の一掃や質素倹約の奨励などの改革を断行するなど、習主席への権力の集中化は強まるばかりだ。

習主席の改革が成功すれば、中国軍の統制や運用能力などの点で、目覚ましい成果が生まれる恐れがある。日本が、習体制が進める「強軍目標」に対抗し、国防強化を進めるための時間的余裕もなくなりつつある。集団的自衛権の行使や武器輸出三原則の緩和などをはじめとする国防改革は、待ったなしだ。(慧)

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