ウクライナの混乱を巡って国連安全保障理事会は15日、同国のクリミア自治共和国のロシア編入の是非を問う住民投票を「無効」とする決議案の採決に臨んだが、常任理事国のロシアが拒否権を行使し、否決された。同じく常任理事国である中国は採決を棄権するなど、問題は複雑化している。

決議案を作成したアメリカは、拒否権を行使したロシアを非難し、対抗姿勢を強めている。だがアメリカ国内では、野党である共和党が、「オバマ大統領の弱腰外交がロシアを増長させた」と責任を追及している。

同党の重鎮であるジョン・マケイン上院議員は、16日付米紙ニューヨーク・タイムズ(国際版)に寄稿。ロシアへの制裁の必要性を訴えながらも、「プーチンのクリミア侵略で最も頭を悩ませるものは、世界における『アメリカ不信』を高めることだ」と分析。こうした動きは「中国の国家主義者やアルカイダのテロリスト、イランの神権政治家というような他の脅威者に、大胆な行動を取らせてしまう」と警戒感を露わにした。

マケイン氏が指摘するように、オバマ大統領の弱腰外交は、これまでにも暴力によって世界を変えようとする人々・組織を増長させてきた。それは、軍拡を続ける中国も例にもれない。その中国が、今回の決議案の採択に棄権したわけだ。

棄権した中国の表向きの理由は、「クリミア問題は話し合いで解決する」ということだが、「あまり騒ぎたくない」というのが本音だろう。

中国は、ウイグルやチベットの反政府運動を押さえつけることに苦労しており、ここに国際的な圧力が加われば、中国が分裂する可能性もある。そうした事情を持つ中国は、ロシアの制裁に同調しないという「貸し」を作ることで、ロシアに「お互いの問題については干渉しないでおこう」というメッセージを送っている。

アメリカは、クリミアの編入に関してロシア制裁一色に染まっているが、経済的な結びつきを強める中国の軍拡や人権弾圧には、事実上、黙認し続けている。アメリカが、「自由主義陣営の旗頭」であり続けたいのならば、国際社会で中国の"国内問題"をこそ取り上げるべきではないか。(慧)

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