ウクライナ危機を受けた市場の反応は、プーチン露大統領の「勝利」を予測していると、ロイター通信(7日付電子版)が報じた。
記事の要旨は以下の通り。
- ウクライナがロシアによるクリミア併合の阻止に動いた場合、軍事的手段を用い、少数派のロシア系住民に圧力を加えることになる。
- こうなれば、ウクライナ内戦が拡大と泥沼化する恐れが高まり、NATOやアメリカの介入が必至となるだろう。西側諸国は、ロシアの介入を認めるか、軍事介入で防ぐかという厳しい選択肢を迫られる。
- プーチン氏は、クリミア介入で国際社会のイメージ低下という代償を払う代わりに、地政学的に重要な領土を手中に収め、教科書に載るような戦略で「勝利」した。
ウクライナが混乱している原因は、経済危機だ。ウクライナの対外債務は、GDPの8割となる14兆円に上り、デフォルト状態にある。1991年の独立以来、市場経済への転換が進まず、汚職が蔓延する脆弱な体質であった。また、ウクライナの主要な輸出先は、経済力に乏しい旧ソ連諸国が多く、十分な経済的恩恵を享受できなかった。こうした状況の下、ウクライナはリーマンショックと天然ガス価格の高騰というダブルパンチを受け、経済状態がさらに深刻化した。
困り果てたウクライナは、国際通貨基金(IMF)に融資を要請したが、IMFの要求するハードルが高く、融資は中断となった。そこで、ウクライナ政府は、安価な天然ガスの調達と融資の確保を求めてロシア寄りとなったため、西側諸国に与したい勢力と対立し、紛争に突入した。
こうしてみると、ウクライナ危機は、「冷戦の復活」というよりも、「経済問題」という見方が正しいようだ。
3月6日、幸福の科学グループ・大川隆法総裁はチャーチル元英首相の霊言を収録した。その中で、チャーチルの霊は「ウクライナ危機の本質は経済戦争だ」と語り、ウクライナがロシアにつくか、西側につくか、いずれの立場が経済的に“お得"かという問題で、冷戦とは性質が違うとした。
ロシアに反発している欧州も、ギリシャやイタリアなどの債務危機国を抱え、これ以上の負担は避けたいのが本音であり、ウクライナを防衛する義務もない。さらには、EU内ですら、ロシア制裁論で一致していないという有様だ。
EUの実情もウクライナ危機も経済的問題であることを考慮すれば、日本はロシアとの関係が悪化する方策を取るべきではない。安倍晋三首相は日露関係を良くし、ロシアへの経済協力によって北方領土返還につなげたいという考えを持っているが、国際的な孤立を招いたプーチン氏は、日本との関係が本物か否かを見極めているからだ。
プーチン氏は、クリミア半島でロシア軍の大規模な軍事行動はしないと語り、同地域はすでにロシア軍が支配しているなど、戦略的目標を達していると見える。欧米が制裁を発動したとしても、強権的な性格であるプーチン氏が撤退することも考えづらい。ウクライナ危機は、「プーチンの勝利」で固まりつつあり、日本は勝ち筋を読み間違えてはいけない。(慧)
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