オーストラリア・シドニーで開かれていたG20(20カ国・地域の財務相・中央銀行総裁会議)は、世界の国内総生産(GDP)を、2018年までの5年で2%以上底上げし、200兆円以上増加させるという目標を盛り込んだ共同声明を採択した。

G20が経済成長の数値目標を明記するのは、きわめて異例のことだ。

経済成長の目標を掲げた意義はあるだろう。だが、数値目標を達成するための具体的な道筋については、各国の裁量に委ねられており、先行きは見えない。

現在、アメリカFRBは、金融緩和政策を変更しつつあり、徐々に市場に流すお金を減らしていこうとしている。そのため、海外市場に流れていたお金も引き上げられ、新興国では株価や通貨が下落し始めている。

こうしたことを背景に、共同声明には、新興国に対して「経常赤字などの課題に対処せよ」と求め、先進国に対しては「金融政策の変更は慎重に」とする内容が明記されたが、これでは、数値目標の達成は難しいだろう。

世界のGDPを引き上げるには、先進国が経済発展の見本を見せ、新興国や途上国を引っ張るしかない。

現在、先進国においては、いくら金融緩和をしても、そのお金は市場にだぶつくばかりで設備投資には回っていない。個々の企業からすれば、リーマンショック等で傷ついたバランスシートを回復させるまでは、新たな投資に回せないというのが実情だ。

それならば、国家レベルでの大規模な投資を進めるしかないのだが、先進国では財政赤字を恐れ、大きな公共事業などを避ける傾向が強くなってきている。一方で、将来に富を生まないバラマキ政策などにお金を回している。

たとえばアメリカも、財政赤字を恐れるあまり公共事業に及び腰になっている。オバマケア実現のための財源確保は重視しても、多額の費用を要するスペースシャトルは引退させ、軍事費も削減しようとしている。

日本においても、今年の4月には消費税が8%に、来年の秋には10%に引き上げられる予定だ。

日米が共に「財政再建」に走ってしまえば、世界の経済はますます縮小してしまう。

結局、先進国もこれ以上の発展ビジョンを打ち出せないために守りに入り、世界経済は低迷してしまっているのではないか。

だが、まだまだ経済発展のフロンティアは無限に広がっている。日本においては、リニア新幹線構想の早期実現が待たれる。経済活動のスピードをアップさせるこのプロジェクトを成功させ、アメリカや諸外国にも輸出する。また、航空・宇宙産業の分野も投資価値は高い。アメリカがスペースシャトルを引退させたなら、日本がむしろ有人宇宙飛行の国際的なプロジェクトを立ち上げてもよい。

世界経済を成長に導くために最も必要なことは、「人類はもっと発展できる」という強い確信と、魅力的なビジョンだろう。今こそ、世界最大の債権国である日本が、魅力的な新しい産業やプロジェクトを提案し、世界経済を引っ張っていく時だ。(佳)

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