インドネシア西端のアチェ州は、イスラム法に基づき、飲酒やギャンブルなどを禁止する条例をさらに厳罰化しようとしており、人権団体がそれに反発していると、英エコノミスト誌(2月15日号)が報じた。
2002年に自治権を法的に認められたアチェは、飲酒やギャンブルを禁止するほかに、イスラム教徒の服装を制限した条例も施行している。イスラム警察は、特に女性の服装を厳しく監視し、タイトなズボンをはいた女性にムチ打ちの刑を執行。09年には議会で石打ち刑が可決されるなど、前近代的な厳しい刑罰の導入を進めてきた。こうした強権的なイスラム社会の変革によって、キリスト教のような非イスラムの宗教が弾圧される危険性が高まっていると人権団体が懸念を示しているという。
こうした経緯は、1976年、インドネシアからの独立を目指したイスラム教武装組織「GMA」の結成にさかのぼる。イスラム教徒の強い地域であるアチェでは、世俗国家を目指す政府に不満を抱き、GMAを中心に「自由アチェ運動」が起き、政府軍と武力衝突した。
長期化した紛争を終結するために、政府はアチェ州の広範な自治権を認め、05年にGMAと和平合意を結んだ。翌年、アチェ州首長選挙で、GMAの幹部が当選したことで、イスラム教に基づいた政策が厳格化している。13年には、女性がバイクの後部席にまたがることも禁止しようと検討したことで、物議を醸していた。
インドネシアとアチェの武力対立は解決したとは言え、アチェではイスラム教の名の下に人権弾圧が頻発しており、平和が訪れたとは言い難い。これ以外にも、イスラム教国家には問題が多い。マレーシアでは、イスラム教から改宗した者は死刑に処され、自由が抑圧されている。
幸福の科学グループ・大川隆法総裁は著書『政治と宗教の大統合』のなかで「コーランには、宗教には強制があってはならないという言葉が、はっきりと書かれていますが、これは守られていません」と、現在のイスラム教徒は人権思想を軽視していると問題視している。
アチェで行われていることは、イスラム本来の教えに立ち返ろうという"改革"のつもりだが、バイクの乗り方まで制限しようとする意味では、「アチェ型イスラム教」とも言える。本来、イスラム教は寛容の教えを説く宗教であり、信教の自由など宗教的な配慮をすべきだ。時代にそぐわない前近代的な宗教は、国際社会から一層、取り残されるだろう。(慧)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『政治と宗教の大統合』 大川隆法著
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