奇跡の大英断はならなかった。
安倍首相は1日、大方の予想通り、消費税率を来年4月から8%に引き上げることを正式に表明した。一方で5兆円の経済対策を行うことで、経済再生と財政健全化の両立を図る考えを示した。
安倍首相個人は増税に慎重との見方があり、増税反対派から寄せられていた期待は見事に裏切られた。
同日は9月の日銀短観も発表され、業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス12となり、前回調査から8ポイントも上昇した。
先に発表されていたGDP(国内総生産)の改定値も3%を超えたため、景気は十分に回復したと判断をしたのだろう。
それにしても、教育基本法の改正、防衛庁の省への昇格、国民投票法案の成立など“大仕事"をやってのけた第一次安倍内閣と違って、第二次の安倍内閣は支持率こそ高いものの、村山談話継承、靖国参拝見送りと何ともその仕事ぶりは冴えないイメージがある。
そこに消費増税の決断である。
取り返しのつかない失政になる可能性が高い。
97年に橋本内閣が3%だった消費税を5%に引き上げた時も、景気回復を待ち、人気の高さを背景に、万全を期して増税に踏み切ったが、その後、悲惨な事態を招いた。
マイナス成長、デフレ、自殺率の増加――多くの経済指標が暗転してしまった。
法人税の減税も、消費増税で赤字企業が増えてしまえば、そもそも法人税を払う企業が減ってしまう。効果は限定的だ。
東京五輪の開催も、今すぐ実需が発生するわけではなく、経済の波及効果もよほどうまくやらない限り、首都圏に限られる。
多くの国民にとっては、消費税の増税だけが生活に重くのしかかるのである。その負の影響は計り知れない。
アベノミクスは日本経済という飛行機を離陸はさせた。しかし、上昇気流に乗る前に減速する道を選んでしまった。日本経済は墜落の危機にさらされる。
1989年に消費税が導入されて、翌年からバブル景気が終息に向かった。
97年に消費税が増税されて、本格的な不況が日本を襲った。
そして2014年の消費増税。このままでは経済大国・日本が「三段下げ」で沈没してしまいかねない。
5兆円程度の経済対策で何となるレベルではない。早急に対策を講じる必要があるだろう。(村)
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2013年9月20日付本欄 法人税を下げるくらいなら消費増税をやめればいい――消費税の打撃を受けるのは企業も同じ
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2013年9月18日付本欄 消費増税中止へ署名14万人 幸福実現党などが安倍首相に提出
http://the-liberty.com/article.php?item_id=6650
2013年11月号記事 安倍政権を終わらせる3%増税の「破壊力」