日銀の黒田東彦総裁は5日の金融政策決定会合の後に開いた記者会見で、消費税率引き上げを見送って国債価格が暴落した場合、財政政策でも金融政策でも対応は困難になると述べた。黒田氏はかねてから、消費税率の予定通りの引き上げに賛成している。

黒田氏は消費増税を見送った場合に、「国債の価格や株価などに、どういう影響が出るかは不確実」と述べている。しかし、日本の国債が暴落するリスクが限りなくゼロに近いことは、黒田氏自身がよく分かっているはずだ。欧米の格付け会社が2002年に日本国債の格付けを引き下げた際に、財務省は次のような内容の反論書簡を送っている。

  • マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
  • その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
  • 日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高

(財務省ホームページ)

これらの状況は現在でもほとんど変わっておらず、消費税率引き上げを見送っただけで国債が暴落するというのは、妄想に近い類の話だ。皮肉なことに、この書簡は「黒田東彦財務官」の名前で送られている。財務官僚時代に、日本国債のデフォルトはないという海外発信の中心を担った人物が、今度は消費増税という財務省の路線を応援するかのように、国債暴落を匂わせる発言を行っているのだ。

黒田氏は、国債暴落のケースとは違い、消費増税で景気が冷え込んだ場合は、財政・金融政策で対応できると述べている。「増税する時と見送った場合のリスクをよく考えるべき」というのが、黒田氏の主張だ。

しかし、消費増税を見送っても国債暴落の危険はなく、逆に増税を強行した場合は景気が急速に冷え込み、長期不況の再来となりかねない。橋本龍太郎内閣が、1997年に消費税率を3%から5%に引き上げた後に、日本経済は15年に及ぶデフレ不況と、倒産、失業、自殺の嵐に見舞われた。それを考えれば、「増税しない」という答えが正しいのは明らかと言える。

日本政府の債務額と国債デフォルトへの懸念は、これまで20年近くも議論されてきたが、いまだに日本国債は世界トップクラスの安全資産の地位を保っている。必要なのは、増税を見送ってさらに強力な経済成長を進めることだろう。景気が良くなれば税収も連動して増えてゆき、それでこそ財政再建への道が開ける。

【関連サイト】

幸福実現党サイト 「消費増税の中止を求める署名」のご案内

http://info.hr-party.jp/2013/1971/

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2013年3月11日付本欄 【注目書籍】アベノミクスは本物か? 次期日銀総裁・黒田東彦氏に一抹の不安あり

http://the-liberty.com/article.php?item_id=5722

2011年11月21日付本欄 日本国債の暴落を危惧する報道には要注意

http://the-liberty.com/article.php?item_id=3313