安倍晋三首相が設置した有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が、集団的自衛権の行使を全面的に容認する新たな憲法解釈を提言すると、2日付読売新聞が報道した。これまで議論されてきた「4類型」の枠組みを超えるもので、今後、日本が世界の平和と繁栄に責任を持つ国家になるか否かという、日本人の「覚悟」が問われる。

まず、「集団的自衛権」とは、関係の深い国が攻撃されたときに、それを自国への攻撃とみなして、共同で反撃する権利。国連憲章ですべての主権国家に認められている。だが日本の歴代内閣は、「憲法9条の関係上、権利は有するが行使できない」としてきた。

また、退陣によって実現しなかったものの、安倍首相は第一次安倍内閣時の2007年に安保法制懇を設置し、集団的自衛権に関する4類型の憲法解釈の見直しを目指していた。ちなみに4類型とは、(1)公海上の米艦船への防護、(2)米国に向かう可能性があるミサイルの迎撃、(3)PKOで他国の軍隊が攻撃されたときに駆けつけて反撃する、(4)PKOで他国の軍隊を後方支援する、の4つである。

安倍首相は、昨年末の政権復帰後も、集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更に含みを持たせており、今年2月には頓挫していた安保法制懇を再開。4類型にとどまらず、集団的自衛権を全面的に容認することを視野に入れた議論が進んでいた。

また安倍首相は今月2日、憲法解釈に大きな影響を及ぼす内閣法制局の長官に、集団的自衛権の行使容認派の小松一郎・駐仏大使の起用を固めた。長官には、内閣法制次長が昇任するのが通例のため、外務省からの起用は異例。「集団的自衛権の行使は違憲」というスタンスをとってきた内閣法制局を改革する狙いがある。

こうした安倍首相の動きは歓迎すべきだが、全面的に容認する安保法制懇の提言が、今後、そのまま政府の「意思」になるか、というと極めて怪しい。連立パートナーの公明党は、集団的自衛権の行使容認に対して、「断固反対」の立場。自民党内にも多くの反対勢力を抱えており、与党内並びに自党内に、大きな「ねじれ」が存在する。

また注意すべきは、国会での議論がこれまでと同じように「4類型」を前提に進んでしまうと、公明党や野党が部分的な賛成や反対を言い始め、結局は、何も変えられないという結論になりかねない。安保法制懇の提言のように、むしろ類型の枠を取り払って、有事の際に臨機応変な対応を取ることを目指すべきだ。

活発化する中国の海洋進出や、北朝鮮の事実上の核武装などの問題に直面する日本にとって、集団的自衛権の見直しは不可欠。安倍首相が、党内外に抱える「ねじれ」を乗り越えることができるか、注視していく必要がある。(飯)

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