安倍晋三・自民党総裁は、「ねじれを解消してこそ『政治の安定』が実現できます」と、今回の参院選で「ねじれ」の解消を目指している。

2007年の参院選で、それまで参院の第一党を維持し続けてきた自民党が惨敗し、民主党が第一党になった。その後2009年の衆院選でも自民党は惨敗、民主党が圧勝し、衆参両院とも民主党が第一党になった。しかし、2012年の衆院選では自民党が圧勝して第一党に復活したため、現在も衆院第一党は自民党、参院第一党は民主党という「ねじれ」の状態になっている。そのため安倍晋三総裁は今回の参院選で、「衆参のねじれの解消」を目指しているのだ。

ただ、安倍首相はあくまでも「"衆参の与野党の"ねじれ」の解消を謳っているが、それ以上に解決しなければならない「ねじれ」は「"自公の与党の"ねじれ」ではないだろうか。

例えば、今回の参院選の両党の公約を見てみると、明らかに主張が異なっているものがある。

●集団的自衛権

自民党は、集団的自衛権について、今までは「保有しているが行使できない」という憲法解釈をとってきたが、現在は集団的自衛権の行使の容認を視野に入れている。一方、公明党の山口那津男代表は、自民党が集団的自衛権の行使を認めた場合は、「断固反対する」と述べ、国民の理解を得られない限り、直ちに変える必要はないと、政府の憲法解釈の変更に反対の姿勢を明確にした。

●9条改正

安倍晋三首相はこれまで改憲への意欲を見せており、自民党は憲法に自衛権を明記し、国防軍を設置することを主張している。一方公明党は、あくまでも「加憲」を主張しており、憲法第9条については、戦争の放棄を定めた第1項と戦力の不保持等を定めた第2項を堅持したうえで、自衛隊の存在を自衛のための必要最小限度の実力組織と明記し、国際貢献の在り方について「慎重に検討」するとしている。

1999年以降、自民党は公明と連立政権を維持してきたが、今回の参院選の争点と言われる憲法問題で政策が食い違う自公が今後も連立を維持することこそ、「政治の安定」を損ねることになる。自民党が憲法改正に踏み切ろうとしても、公明党が足を引っ張り、実現しない可能性も考えられるためだ。

したがって、安倍首相が「私たちの自信と日本の誇り」(自民党の参院選公約より)を取り戻したいのであれば、今回の選挙を機に、「自公のねじれ」を解消、つまり公明との連立を見直すべきではないだろうか。(飯)

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