サッチャー氏もレーガン米大統領も正義を貫き、冷戦に勝ち抜いた。東アジアの冷戦でも、正義を貫く政治家が求められている。写真:AP/アフロ

2013年6月号記事

サッチャー革命の、さらにその先へ

4月初めにサッチャー英元首相が死去し、世界中で功績が称えられる一方、イギリスでは“祝賀パーティー"が催されるなどして評価が二分した。

労働組合を中心とする反サッチャー派は「今度は地獄が民営化される!」と大騒ぎし、どうも同氏の霊が地獄に堕ちたと言いたいようだ。

日本では小泉改革以降、「格差」批判が強まり、アメリカでは昨年、「上位1%の富裕層」を攻撃する「ウォール街を占拠せよ」運動が高まった。イギリスではサッチャー革命以来、同様の抗議の声がくすぶり続けている。

階級をなくそうとしたサッチャー改革

サッチャーが目指した「革命」の狙いはむしろ逆で、「貧困層を丸ごとなくしてしまおう」というものだった。

国営企業を民営化し、国民に株を持ってもらう。公営住宅を売却し、持ち家の主になってもらう。大胆な規制緩和で職業集団ごとの特権をなくす――。

これらの自由化政策によって、労働者が資本家を打ち倒す「マルクス主義革命」と反対に、 労働者階層が私有財産を持てるようにし、資本家・資産家階層へと変えようとした。

サッチャー氏は、「イギリスを階級のない国にしなくてはならない」と信じ、本気でその実現に突き進んだのだった。

「前世紀の偉大な政治改革は、より多くの国民に投票権を与えるものだったが、今世紀の偉大な政治改革は、より多くの人が財産を持てるようにするものです。それが一つの国、一つの国民をつくる道です」

サッチャー氏はこう語っており、マルクス主義的な階級闘争を終わらせることに異常な使命感を持っていたことが分かる。

「宗教政治家」に近かった

ただ、その願いが労働者階層の人たちにはなかなか伝わらなかったようだし、「悪い魔女が死んだ」などと喜ばれるぐらいだから、相当恨みを買っていたようだ。

特に評判が悪かったのは、首相任期の終盤に導入した「人頭税」だった。固定資産税をやめる代わりに、18歳以上の人すべてに年10万円程度を課税し、地方自治体の教育やインフラ整備の財源にするというもの。収入のない人の懐も直撃したため、暴動が起こるほどの反対運動が起こった。

サッチャー氏としては、同氏が属していたキリスト教・メソジスト派の創始者ウェスレーが説いた「できる限り稼ぎ、できる限り蓄え、できる限り与えよ」を政治的に実践しただけなのだろう。要は、 すべての人が「もらう側」ではなく、「与える側」に立ちましょう ということだ。

サッチャー氏はあらゆる経済改革について、 「経済は手段なのです。目的は心と魂を変えることです」 と力説していた。結局のところ、同氏は、 メソジストの徳目にある勤勉や自助努力、質素倹約などを実践するような国民を育てようとした「宗教政治家」に近かった。

「心と魂」の成長のために

その信念は国内にとどまらなかった。冷戦のさなかの1984年、後のゴルバチョフ・ソ連書記長と初めて会談した際、「私は共産主義が大嫌いです」と言い放ったことからも分かる。

その後、レーガン米大統領らとの盟友関係で冷戦を勝利に導いたわけだが、それもサッチャー氏が、 貧しさを正当化する共産主義が「心と魂」の成長にとっていかに悪であるかを確信していた からだろう。

現在の東アジアでの冷戦は、中国の強国化、北朝鮮の狂暴化で、80年代の対ソ冷戦以上の対立となっている。

残念なのは今、神を信じることも認めない中国・北朝鮮の現体制を「悪」と断言する、サッチャー氏のような政治家が存在しないことだ。サッチャー氏が現役ならば、「一刻も早く両国民を解放せよ、自由を与えよ」と各国首脳に説いて回ることだろう。

未完のサッチャー革命の続きを

「中国や北朝鮮の為政者に、『人間は神の子である』ということを分からせなければなりません。そして、そのことが分かったならば、国民に自由を与えなければならないのです」 ( 『未来の法』 第5章)

大川隆法・幸福の科学総裁は事あるごとに国際正義を訴えている。世界を見渡しても、中国・北朝鮮の抑圧体制に真正面から立ち向かっている存在は、大川総裁以外にいないし、政党では大川総裁の創設した幸福実現党以外にない。

幸福実現党は、すべての人が魂として無限に成長できるような国や世界をつくろうとしている。それは、未完のサッチャー革命のさらに先であるし、本物の宗教政治家にしかできない仕事でもある。

(綾織次郎)