北海道は19日、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に参加して関税が撤廃された場合、道内の主要農林水産物の生産が5241億円減少し、農林水産関係の雇用は17万人以上減るとの試算結果を発表した。

試算は、「TPP参加による関税撤廃で、安価な外国製品の輸入が増加」することを想定したもの。特に乳製品は、「外国産と品質格差がない」との理由で、生クリーム以外の商品がすべて輸入品に置き換わると予想。現在の生産額から45%(約1175億円)減少するとしている。

その一方で、農林水産物の輸出増加については、「(輸出)対象国の関税率は現在も低率かゼロで、道産品にメリットはない」(道農政部、20日付毎日新聞)との理由で試算されていない。

しかし実際は、北海道製品は海外で人気が広がっており、関税撤廃によって輸出を拡大することは十分可能だ。

たとえば、北海道は常温で90日の長期保存が可能なロングライフ(LL)牛乳をアジア向けに輸出している。北海道のLL牛乳輸出はホクレンが1996年に年間90トンから始めたが、その後17年経って拡大の一途をたどっている。昨年11月には富良野市のふらの農協がLL牛乳の輸出を本格的にスタートし、香港に向けて毎月40~50トン輸出するようになった。

また、台湾のある観光牧場は2008年、伊達市の乳製品製造会社の人気製品「白いプリン」の製造ラインを導入し、台湾で製造開始。人気はうなぎのぼりで、売上高は毎年3割近く伸び続け、同牧場のオーナーは「北海道の牧場はあこがれ。品質の良さを訴えたい」と話している。タイでも、乳製品販売会社が「北海道の名を付けるだけで売れ行きが伸びる」と明かしている(いずれも1月5日付日経新聞北海道版)。

このように、北海道産の農業製品の品質やおいしさは、アジアで高く評価され始めている。しかも、北海道の農業生産額における輸出の割合は1%前後で、大きな伸びしろがある。北海道ではTPP交渉参加反対が根強いが、参加で得られる市場拡大のチャンスを生かし、世界に「北海道ブランド」を広げる方向へ舵を切るべきだろう。(晴)

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