北朝鮮が、韓国に対する挑発の度を深めている。同国は13日、人民武力部が発表した報道官談話の中で、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の対北朝鮮政策について「李明博前政権の破綻した対決行為の踏襲」と論じ、初めて批判した。
先月の核実験以降、北朝鮮は朝鮮戦争の休戦条約を白紙化すると宣言するなど、米韓を威嚇して半島の緊張を煽っている。その背景には、金王朝の体制を揺るがしかねない、内政の危機が見え隠れする。
13日の韓国紙・中央日報は、昨年、首都平壌で金正恩第一書記を暗殺しようとする動きがあったと報じた。詳細は不明だが、首都平壌でも、体制への不満が爆発寸前までくすぶっていることをうかがわせる。
実際に金正恩体制は、強硬派として知られた李英鎬(リ・ヨンホ)参謀総長を粛清するなど、軍部から反感を買ってきた。こうした不満を逸らすために、軍強硬派が望むミサイル発射や核実験などを矢継ぎ早に行っているのではないかという見方もできる。
軍部に加えて、民心の離反も悩みの種だろう。14日付の産経新聞によれば、金正恩体制は、春にかけて食糧の備蓄がなくなる「春窮期」を前にし、戦争の危機を創り出すことで民衆の忠誠心を高めることを狙っている可能性があるという。
だが食糧や燃料が自給できない中で、強まる中国依存にエリート層が不満を持っているという分析もある。米オーベリン大学のシェイラ・ミヨシ・ジャガー准教授は、13日付米ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、「慢性的な飢饉と国際社会での孤立で、北朝鮮の人々は中国への依存が深まっていることに、強い懸念を持っている」と論じた。
北朝鮮は燃料の90%、食糧の45%を中国からの供給に頼っており、北朝鮮に60億ドル以上の投資を注ぎ込む中国が、北朝鮮を植民地化しないかという懸念は付きまとう。北朝鮮の体制が掲げる「主体(チュチェ)思想」は、外交では自給自足を理想とするが、現実とのかい離は開いてゆくばかりだ。
北朝鮮にとっては、中国による植民地化と同様に、中国に見捨てられるというリスクも気がかりだ。北朝鮮は「核でアメリカを狙える」とうそぶくが、中国もまたミサイルの標的になりかねない。そのため、もはや北朝鮮を温存しておく価値はなくなったという声が、中国政府周辺からも上がり始めている。
中国共産党中央党校機関紙で副編集長を務めるデン聿文(デン・ユーウェン)氏は、2月27日付の英フィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で「中国は北朝鮮を見放すことも考えるべきだ。平壌を諦める最善の策は、韓国との統一を推進するようイニシアティブを取ることである」と述べている。
北朝鮮の核ミサイルは、日本を含めた周辺国にとって甚大な脅威となる。しかしそれは、崩壊寸前の北朝鮮が命からがら危ない橋を渡っているのだとも言える。軍事的な脅威への備えと同様に、体制崩壊への準備も欠かせない。
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2012年3月号 記事 2012年 北朝鮮を崩壊させよ