3度目の核実験後も、北朝鮮が挑発を続ける構えを見せている。一方、韓国も北朝鮮に対して過激な論調が高まり、にわかに朝鮮半島はきな臭くなっている。
朝鮮労働党の機関紙である労働新聞は14日付の社説で、アメリカなどが進める金融制裁に対して「無慈悲な懲罰と、第2、第3の連続的措置で対応する」と述べ、追加の核実験や軍事的な挑発に及ぶ可能性をほのめかした。これまで北朝鮮は長距離ミサイルをあくまで“衛星"と称してきたが、同社説ではICBMの開発も宣言しており、国際社会に対するさらなる揺さぶりに出ている。
これに対して、韓国では核武装の議論が保守派を中心に出始めている。与党セヌリ党の幹部会で核武装論が飛び出したほか、核武装を求める保守団体の集会も行われた。韓国はまた、配備済みの巡航ミサイルに加え、北朝鮮全土を射程に収める弾道ミサイルの開発・配備も進めている。
韓国側が対応を急ぐ背景には焦りもある。ミサイル、核実験を続けざまに行っている北朝鮮に対して、韓国は1月30日に3度目の打ち上げで初成功したロケット開発や核開発で水を開けられている格好。加えて、2010年秋に北朝鮮が延坪島を砲撃した際には、韓国側が反撃を拡大しない立場を取ったこともあって、韓国内の対北朝鮮強硬派の間ではフラストレーションが溜まっているようだ。
国防体制の充実は必要だが、思うようにいかない北朝鮮対策についての欲求不満から強硬論が台頭するなら、懸念のもとである。対抗戦略が十分でない段階で、北朝鮮との偶発的な紛争が全面衝突に発生する事態もあり得るからだ。
一方で、北朝鮮の核実験をきっかけに国防議論が盛り上がるのは至極真っ当なことであり、この点については日本も見習うべきと言える。参院選を意識する安倍晋三首相は、国防問題にそこまで積極的な姿勢を見せていないが、足元では国民の国防意識がじわり高まってきているようだ。毎日新聞の布施広・論説委員が、自身が関わりをもつ複数の大学でアンケートを行ったところ、学生の約半数が核武装は日本にとって必要だと答えたという(15日付 毎日新聞)。
北朝鮮の核武装はアメリカの核の傘を無力化する恐れすらあり、日本の存亡にすら関わりかねない問題だ。安倍首相は事態の重大さを国民に真摯に説得して、核武装を含めた国防強化について理解を得るべきである。北朝鮮が事実上の核保有国となった今、選挙向けの安全運転に徹している時間はない。
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